こんばんは。

ミステリ案内人・稲葉の白兎です。

今更ながら江戸川乱歩は面白いですね。

特に本格推理小説がです。

その中でも異色中の異色の本格推理

「三角館の恐怖」。

これはアメリカのロジャー・スカーレットが書いた「エンジェル家の殺人」を

乱歩が非常に気に入って、
日本語に訳してしまいました。

本格度合いが強すぎるのか
乱歩作品では、知名度は低いです。

猟奇、狂気が絡んでないと
乱歩の世界っぽくないわけです。

「三角館‥」は、怪奇要素ゼロ。
👻
犯人は「灰色のソフト帽の男」に変身しますが、
さして猟奇的じゃありません。

ただの変装です。

双子の老人がメインキャラクターですが、
厳密な双子ミステリーとは言えません。

なぜなら、双子のトリックがない。
手品によくある入れ替わりのトリックですね。

双子の特性を利用したミステリーじゃありません。

この物語の双子の主人公・健作と康造は、
外見が似てません。

似てるどころか、
全てが正反対!!

元気で無茶な事をする健作老人。 
がっしり体形。
白髪

締まり屋で用心深い康造老人。
痩せ型。
黒髪。

情熱家と理性家。

若い時の不摂生が祟ったのか、
健作老人は明日をも知れぬ命。
心臓病を抱えています。

自分が死んだら、財産は全て弟のもの。
2人の息子と義妹は路頭に迷います。
健作老人の家族は働く事を知りません。
プライドだけは
高いから大変です。

いささか遅きに失した感じですが、
康造老人に土下座をせんばかりに、
自分が死んだ後、遺産を半分息子たちに分けてほしいと頼みます。

康造は、しかし、首を縦に振りませんでした。

「その問題はしばらく考えさせてくれ」

兄の出来損ないの息子2人に遺産をやるつもりは
ありませんでした。

康造の性格を知り抜いている健作は、
自分の提案を却下するに違いないと悟ります。
絶望的な気分になります。

こんな具合で、
双子にミステリー的怪しい意味合いはありません。
害のない双子と言いますか。
別に普通の兄弟で十分です。

ドラ息子2人と弓子は、
「商談」が失敗した事を悟ります。
右三角館の住人は絶望気分が蔓延。

ところが奇跡が起きます。
その夜、康造は死にました。

ピストルで撃たれて。

大逆転。

健作老人サイドは一気に金持ち。

康造側の養子・良助と桂子はショックを隠せません。
養父が死んだ悲しさより、遺産が入らない悲しさ。

お祭りムードの健作老人の次男・丈二。

健作は、財産の半分を良助たちに分けることにします。

「お父さん、そんな事をする必要なんてありません!
お父さんは堂々と遺産を相続してよいのです」

だって、康造老人は半分遺贈の提案を却下したではないか。

それに、康造のところの良助も、働いてお金を稼ぐという事をしない人間でした。

律儀な健作は、良助たちにも遺産を半分相続させる書類を作ろうと弁護士に依頼します。

明智小五郎は、弁護士の親友でした。

半分遺贈の件を聞き、
保留させようとします。

イヤな予感がするのです。

遺産が入らないというピンチを
何者かが康造を殺したことにより、
大逆転したのです。

つまり、犯人は、
健作に財産を継がせたいのです。

それを今度は財産を半分、
弟側にも分けようというのです。

そう言えば凶器は拳銃でした。

老人を殺すにしては、あまりにも大袈裟な凶器。

銃の所持ができない日本で、
なぜ?

おお、これは原作者はアメリカ人でしたね。