こんばんは。

ミステリ案内人・稲葉の白兎です。

何十年ぶりに古典の翻訳物を買いました。

クロフツの
「チヨールフォント荘の恐怖」。

あんまり聞いたことのないタイトルですが、
復刻版だそうです。

クロフツは好きな作家なので買いました。

ヴァン・ダインや
ディクスン・カー
エラリー・クイーンより読みやすい。

なんか、日本的なんですよね。

今日で2日目。

主人公の女性に共感を持てるような、
持てないような。

中年バツイチ子持ちの女性が「秘密の花園」よろしく、
大きな屋敷と庭でガーデニングを許してくれるやり手弁護士と再婚。

ところが、この男性との愛情生活は
早くも破綻します。
主人公はこの男性がどうしても好きになれない。

生理的嫌悪のほかに、
この男性自身がとても神経質で嫉妬深い。
厳格。

主人公の女性だけでなく、
こう言ったら可哀想だけど、
執事以外の全ての人間から嫌われています。

要は、誰からも好かれないのです、

松本清張の某作品にありました。
本人は死ぬほど努力してるのに、
決定的に人に好かれない才能の持ち主がいること。

このリチャードという男性も、
決して悪人ではないのに、同居人から好かれていません。
主人公の娘、甥のジェフ、趣味の仲間の化学者、
などが、皆、露骨にはしないだけで、
何を考えてる人かわからない人たち。

そんな女主人公は、ある時、
隣人の男性と意気投合し、
数回後の顔合わせから男性から好意を打ち明けられ、
逢引を始めます。

ロンドンのホテルが2人の逢引場所。

ところが!
予想通り、悪いことはできないもんですね、
夫リチャードの執事に発見された模様。

善後策を取る2人。
隣人の恋人フランクは
「これを機に結婚しよう💗。
旦那に許してもらおう」


主人公は大反対。
絶対にムリ!

あなたはあの人を知らないから。
あの人の性格を。

リチャードが認めるはずがない。

「じゃあ、許可はいらないから、2人でどこか遠くで暮らそう」

それも気が進まない主人公。

リチャード側から言うと、

妻は自分を嫌っている。
表面でも自分を愛そうという彼女の努力は
露骨に破綻してきた。

連れ子はあからさまに自分を嫌い、
ジェフも化学者も心が見えない。
執事のクルームだけは、そうでもないが、
あくまでも任務による人間関係だ。
信用なんて絶対にできない。

隣人フランクは煮え切らない恋人に
決断を迫ります

何やら、事件が起きそうですね。

殺人が起きてから、被害者の身元、人となり
人間関係が浮き彫りになる作品と、

ドラマが先で人物紹介が終わった後、
さて、何が起こるか⁉︎という作品。
本作は明らかに後者。
前者が多いんですけどね。

「人狼城」はドラマ、人間関係、背景が先でした。
事件は後からついてきた!

リチャードがめちゃくちゃ台風の目じゃないですが!

織田信長並みに嫌われている。

もしかして、死ぬのはリチャード?

事件、死体先行型ではなく、

ドラマチックな人間関係から
何かが破綻するわけですね


どうです?
非常に今風なストーリーじゃないですか。

不倫、浮気、略奪。

でも今ほど自由な風潮ではなく、
かなり主人公はがんじがらめに絡めとられています。

心が不自由なんですわ。