こんばんは。
稲葉の白兎です。
松本清張をはじめとするミステリを紹介しています。
今は、二階堂黎人氏の「人狼城の恐怖」講談社を紹介しています。
本格推理でありながら、オカルト色の強い本作。
特にフランス編では、「人狼」というフレーズが煩さに出てきて、
それがオカルト色を強く見せています。
本編では、ナチスドイツは、戦争も末期になると、
人狼作戦を進め始めました。
ドイツ国防軍を助けるゲリラ部隊「人狼部隊」から名前を取ったとのこと。
こちらの「人狼」は、
疲れを知らない兵士、
アストラル(気体)兵士の事です。
リケ博士が開発したアストラル兵士は全部失敗作で、死体を乗っ取る歩く凶器と化してしまいました。
シユライヒヤー伯爵一家の住む「青の狼城」に到着した日から、
「アルザス独立サロン」の7人の面々は不思議な目に遭います。
特に殺人に関しては、人間のやった事とは思えない離れ業をやってのけるのです。
その出来事の一つがティータイムです。
ローラント、ミューラー、アノー医師の3人は、
城の料理人・ゲルダの淹れた午後の紅茶を飲みます。
一つのポットで、3人のカップに平等に紅茶を注ぎました。
3人は、それぞれ思い思いのカップに手を伸ばしました。
しばらくすると、ミューラー教師が突然苦しみ出し、絶命しました。
死んだのはミューラー教師だけでした。
アノー医師が検死をします。
それによると
イチイの実の毒でやられた可能性が濃厚だと言います。
ローラントは、ゲルダの紅茶を淹れる時の手元を見るとはなしに見ていましたが、
怪しい動きは全くしてなかったとのこと。
2人は色んな可能性の話をしましたが、
かえって謎が深まるばかりでした。
紅茶ではなく、砂糖に入っていたのでは?
という説も、アノー医師の
「イチイの実を粉状にするのは容易ではありません」
のセリフの元、否定されます。
誰がミューラー教師のカップだけに毒を入れたのか?
自殺の可能性は低そうです。
隣にいるサロモン警部は、
前の晩、下男グスタフと城の探検の際、暗闇から飛んできたクロスボウが腹に刺さり、
絶対安静の重態です。
サロモンにミューラー毒殺は無理です。
ローラントは、もう犯人は人狼以外に考えられなくなってきました。
城の住人アランを始め、
シャリス夫人、ランズマンと、不可解極まる死をとげています。
人狼が、訪問の直前にサロンのメンバーに取り憑いた事が前提になっているので尚更です。
アノーが時々、サロモンの包帯を取り替えます。
「血が止まりません!
私にはサロモン警部の命の保証はできません」
彼は悲しげに言うと、自分の殻に引きこもってしまいました。
これがアノー医師の精神の限界でした。
ローラントしかサロモンの手当てをする人がいなくなりました。
サロモン警部の顔はやつれ果て、半分死んだも同然でした。
「サロモン警部、頑張ってください、
必ず助けが来ます」
紅茶を淹れたゲルダを最後に、
城の住人は、一切姿を見せなくなりました。
サロモン警部と一緒に探検に行ったはずのグスタフは戻って来ませんでした。
案外、グスタフが襲ったのではないかと私は考えましたが。
生死の境を彷徨うサロモン警部。
そこへガチャンガチャンと音がして、
斧を持った西洋甲冑を着た者が現れ、3人を襲います。
アノー医師はすっかり無気力になって逃げようとしません。
ローラントはサロモンを担いで逃げます。
一体、この人狼城は何なんでしょう?