こんばんは。
稲葉の白兎です。
珍しく昼間に書いてます。
「人狼城の恐怖」
という二階堂黎人の国内最長小説について解説をしてます。
日本人の作品ですが、殺人の舞台はドイツとフランス。
松本清張の小説でも、外国が舞台で、登場人物がほぼ外国人の作品もあります。
「霧の会議」ですね。
タイトルの硬い印象と裏腹にサスペンス度濃厚の、実にハラハラドキドキの作品でした。
しかも長い!
舞台は、同じスイスを中心としたヨーロッパ。
さて、人狼城の恐怖は、
フランス編とドイツ🇩🇪編があります。
フランス編は、
ドイツ国境の近くでは一番栄えている中心都市・ストラスブールが出てきます。
そこで主人公のローラント青年弁護士と旧友テルセ検事補が旧交を温めるところからスタートします。
ローラントは「アルザス独立サロン」という高級会員制クラブの会員です。
入会の設定は厳しいです。
まず、基本中の基本。
アルザス人であること。
アルザス人とは、アルザス地方に住んでいる土着の人です。
アルザス地方とは、フランスとドイツの国境近くの地域です。
一般にアルザス・ロレーヌ地方と呼ばれています。
ここは、フランス領土でありながら、戦争のたびにドイツに占拠されたりして、ドイツになってしまうことも。
その悲劇を端的に表しているのが、
ドーデ作「最後の授業」という作品です。
小学生の国語の教科書に出てくるので覚えてる人もいると思います。
わんぱく盛りの主人公の少年が、先生の様子がいつもと違うことに気がつきます。
先生は、突然、騒がしい教室でビックリすることを言います。
「今日でフランス語の授業はおしまいです。明日からは、ここはドイツのものになり、ドイツの先生が来てドイツ語の授業になります」
教室はシーンとなります。
先生は言います。
「フランス語は世界で一番美しい言葉です。忘れないでください。」
最後に「フランス万歳!!」🇫🇷🇫🇷
と教師は叫びました。
😭ヽ(;▽;)ノ
占拠とはどういうことか、
敗戦国とはどうことか、
大人の事情がこの短い作品一つで感覚でわかりますね。
アルザスは、地域的時代によってフランスになったりドイツになったり、という悲劇の最前線にありました。
ドイツからはもちろん、同胞のフランス人からでさえ、疎ましく思われています。
中途半端な存在です。
そこで、アルザスはアルザス人として、
フランスから独立したいと考えても不思議はありません。
「アルザス独立サロン」はもちろんこの物語にのみ出てくる架空のクラブです。
テルセ検事補はパリでも指折りのエリートですが、アルザス人ではないので、
サロンの入会資格はありません。
アルザス人によるアルザス人のためのクラブです。
特定の入会金や会費を払うので、
ある程度の社会的地位や年収がないとダメで、
サロンのメンバーであることは一種のステータスとなっています。
テルセ検事補はローラントに頼みごとをします。
シユライヒヤー伯爵を調査してほしいとのこと。
脱税の疑いから、国税局の職員を派遣したところ、「青の狼城」から戻らなかったというのです。
近々、サロンの代表メンバーがスポンサーのシユライヒヤー伯爵を表敬訪問ことになっており、
ローラントには是非そのメンバーに加わって、
シユライヒヤー伯爵を内偵して欲しい、
できれば国税局のポール・ガイヤー氏を連れ戻して欲しいと。
それからテルセ検事補は、サロモン警部を紹介します。
サロモン警部は、捜査一課ですが、
腕利きの「ナチスハンター」という裏の顔も持っています。
恋人をナチスに殺されてから、ナチスに復讐を誓っています。
ナチスの生き残りを全て抹殺することを生き甲斐にしています。
ここから先はオカルトめいてくるのですが、
ナチスは、オカルトの組織であり、
戦争も末期になると、アストラル兵士という不死身の兵士の開発製造に手をつけました。
試行錯誤を繰り返したものの、結局モノにならず、失敗作だけが3人産み出されたと。
それは、人狼作戦と言われたので、失敗作は人狼と呼ばれます。
その人狼とは、死ぬと、体から魂だけが抜け出て、新しい死体に入ると蘇生するというものです。そして記憶をモノにして、そのまま、生前通りの生活を送ります。
ただ同じ体にいると、劣化するので、
時々体を新しいものに交換しなくてはなりません。
ローラントは、最初サロモン警部の頭がおかしいのではないかと、あまりの突飛な話についていくことができませんでした。
だからこそ、テルセ検事補が同席したのでしょう。
とにかく、最後の一匹の人狼が、ローラントのいるアルザス独立サロンのメンバーに取り付いたようです。
続きはまた。