こんばんは。
稲葉の白兎です。
ミステリを紹介してます。
オカルト色の強い本格推理小説「人狼城の恐怖」。
なぜなら、
人狼という、未確認生物の話、
ナチスドイツのSSの話、
アウシュビッツ収容所の双子の人体実験の話、
中世のフランスに現れた謎の貴公子サンジェルマン伯爵の話、
青髭公ことジル・ド・レー将軍の話、
などなど沢山のエピソードが出てきます。
特にフランス編の青の狼城事件のほうは、
オカルト色が強く、
色んな意味で、ドイツ編より面白いです。
でも読むとしたら、ドイツ編を先にしたほうが
分かりやすくていいと思います。
ドイツの観光団は、
アルザス独立サロンのメンバーと違って、
最初からツアーのためにかき集められた
お互いに知らない同士です。
叔父と姪のカップルもいましたが。
ドイツ編のフエラグート教授と、
フランス編のミューラー教師のキャラが酷似。
二人とも70才くらいの老人。
どちらも職業柄、かなりの薀蓄やで、
辟易するほど。
そして酒豪。🍷
ワインの薀蓄もすごいです。
性格はどちらも親切な世話焼きタイプ。
さて、青の狼城を訪問するアルザス独立サロンの面々は、
サロモン警部とローラント・ゲルケン弁護士が、
人狼探しとその始末にメンバーに加わったように、
他にも表敬訪問以外のよこしまな目的で参加した人もいます。
ミューラー教師もその一人。
彼の真の目的は、
伝説の聖槍
「ロンギヌスの槍」を発見すること。
そのため、あらゆる手を尽くしてメンバー7人の中に入れてもらいました。
彼は前々から青の狼城にその聖槍が眠っているのではないかと、目を付けていました。
ロンギヌスの槍とは?
それは、キリストをロンギヌスという名前の小役人が処刑の際にキリストを槍で傷つけました。
槍に血がついたことから、
その槍はロンギヌスの聖槍と呼ばれるようになりました。
ロンギヌスはお金に困ったのか、槍をどこかへ売ってしまいました。
その槍を所持した者は、
あらゆる奇跡を生み出すと信じられ、
伝説が独り歩きしてきました。
どうやらミューラー教師の野望を、
青の狼城の城主・シユライヒヤー伯爵は見破っていたようで、
単独でワイン蔵に入ってコッソリ探し物をしているミューラーを問い詰めます。
アンタはめちゃくちゃ勘違いをしてると伯爵は言います。
ロンギヌスの槍などというものは、決してこの城には隠されてないし、
そんな下らないものに何の興味もない、
と断言。
絶対にないと言い切られて、
10年も一気に老けたようになったミューラー教師。
あまりにもガッカリするミューラー教師を見て、
さすがに意地悪な伯爵も同情してしまい、
こんな提案をします。
「その代わりと言ってはナンだが、
キリストの血の入ったワインを飲んでみないかね?」
と奥から秘蔵のワインを出します。
「結構です」
と断るミューラー教師。
「二度と飲む機会はない、貴重なワインだぞ」
と追い討ちをかけますが、
ミューラーはすっかり戦意喪失して部屋に帰ります。
よほどロンギヌスの槍に賭けてたのでしょう。
この何気ないエピソードも、
解決編で、意外な事実を浮かび上がらせます。