こんばんは。
稲葉の白兎です。
江戸川乱歩の「大暗室」は、
冒険小説。
であり、悪人ヒーロー小説でもあります。
正義の味方も登場するのですか、
影がうすい。
大曽根五郎の冒頭部分におけるインパクトは、
他の追随を許しません。
「そこまでする⁈」は、
あれから更に続きます。
ボートで撃ち殺したはずの執事・久留須が生きていた!
よりによって、男爵の遺児・友之助を池に葬った直後に、
屋敷を訪ねてきました。
妻・京子に例の悪事を全てバラしてしまいます。
身分の違いを盾に、大曽根は虚勢を張ります。
「京子、こいつの言うことは信じるな。俺を脅して金をせびるつもりなのだ」
執事「君も耄碌したものだね。どっちが正しいかは、さっき君が古沼に投げ込んだ友之助坊ちゃんが証言してくれるよ」
友之助が生きていた⁈
執事「びっくりしてるね。この目で私は君が坊ちゃんを投げ入れるのを見たよ。
君が立ち去ってから、お救いし、しかるべき安全な所へ預けた。5歳とは言え、自分を殺そうとした人物を見誤ることはあるまい」
すすり泣く京子が執事の主張を雄弁に支持していることがわかりました。
大曽根の負けです。
執事「奥様、どうしますか? 私は警察に突き出すことまでは、諸々の事情で気が進みませんが」
京子は大曽根を睨み、キッパリと
「今すぐ出て行ってください!」
寛大な処置です。
「30分以内に竜次を連れて出て行くから、支度の時間を少しくれ」
部屋を出て行く大曽根。
悪人の割にアッサリしたものです。
しかし、待てど暮らせど大曽根は戻ってきません。
そのうち、応接室の隅から煙が出てきました。
2人は外に出ようとしますが、
鍵がかかっています。
大曽根の仕業です。
結局、屋敷ごと放火され、執事と京子と屋敷内の大半の召使いは
命を失いました。
「全部、貴様のせいだぞ、久留須。
貴様さえ余計な所へ帰って来なければ京子は死なずに済んだんだ」
喚くクルスに向かって大曽根は嘲笑います。
ほんと、驚きです。
京子まで殺してしまうとは。
甘すぎました、久留須執事。
実は、執事はまたしても生きていました。
紅蓮の炎をかいくぐって、
顔や体に大火傷を負って、
なんとか脱出できたのです。
これで大暗室の第一部は終わりです。
話はこの後、20年後に飛びます。