ふこんばんは。

稲葉の白兎です。

推理小説なるものは、手を変え品を変え、
市場に出回っております。

推理小説というと、古い響きで、
ミステリとかのほうが現代的ですね。

音楽の父がベートーベンなら、
推理小説の父は江戸川乱歩で、
誰しも異論はないと思います。

乱歩が信長、
正史が秀吉、
じゃあ、家康は、高木彬光?
かというとそうでもなく、
松本清張さんがビッグネームですね。

清張は、犯人探しや犯罪方法のミステリだけでなく、
殺人が出てこない恋愛もの、企業もの、悪女もの、ノンフィクション、など多岐にわたっています。
正史や乱歩に見る怪奇の要素はほとんどありません。怪人、誘拐、変装、同性愛、美青年なし。

密室殺人、童謡殺人、クローズドサークルも、ないか、滅多にないです。
あるのは、汚職、学界、嫉妬、夜の世界。

乱歩さんと清張センセは真逆と言っていいですね。
奇想天外さがウリの乱歩さんですが、

「死の十字路」

のストーリーを思い出すにつけ、

すごく松本清張的だと思います。

松本清張は、凡人のハッピーエンドを許さない人。(笑)

ではその「十字路」とは?

男女の三角関係のもつれから、発作的に殺人が起こります。

殺したのは男性、死んだのは奥さん。
男性は早速、愛人にアリバイ作りを頼みます。

奥さんの格好をさせて、熱海の錦ヶ浦に身投げしたように見せる偽装工作です。

愛人が旅立ったあと、男性伊勢省吾は、
死体を車のトランクに入れて、
山に捨てに行きます。

ところが、運命の交差点で伊勢は事故を起こします。
交番で事情聴取を受けます。

その間に、
知らない瀕死の男性が駐車してる車に入り込み、息絶えます。

男性は、ある若いカップルの兄。
親を亡くした兄妹が長年一緒に暮らしてて、
妹に彼氏ができて、
兄は結婚に猛反対。

ある日、ケンカになって、兄が彼氏に殴られ、
フラフラと立ち去ります。

その兄が意識朦朧として乗った車が
伊勢のクルマ。

兄は発車後まもなく絶命。

そうとは知らず、遅れを取り戻すように必死こいて運転する伊勢。

山に到着して、古井戸に捨てようとしたら、
さあ大変!
後部座席の別な死体に気づきます。

😱

もうパニックですよね。

わけがわからないです。

しかし、そこは男性。
原因を考えてもムダ。
問題は処理方法。

一人捨てるも二人捨てるも一緒だと伊勢は気をとりなおし、いっぺんに同じ場所に処分。

この時、浮浪者に見られていたのです。



妹グループは、兄の捜査願いを出します。
それだけでは警察は役に立たないので、
私立探偵を雇います。

探偵は、問題の起こった前後の経緯を吟味します。
ケンカをして殴られた後、どこに行ったのか?

聞き込みの上、その時間帯に人身事故があったのを知ります。

交番で事情聴取を受けているクルマがあった!

もしや、その車に兄は入ってしまったかもしれない!

大胆な推理。

車の持ち主は伊勢省吾。

探偵は、伊勢を調べます。

結局、伊勢は探偵に恐喝されます。

探偵は伊勢が事業家と知り、警察に突き出すよりは、
金銭をせびったほうが得策と判断しました。

伊勢や愛人はあの日以来、生きた心地がしません。
気になるのが奥さんの履いてた靴。

死体を捨てるとき、片方の靴がもげてしまっていることに気づきます。

「靴がない!」と叫んでしまいます。

またしても伊勢の失策。

死体を捨てた後、さんざん探します。
結局、靴は見つからず、東京に帰ります。

そして、いきなり現れた花田探偵。
花田は単刀直入に
「この靴を👠5000万で買いなさい」
と言います。

花田探偵にもビックリ。
ワルだったんだ。

残酷な話です。

キツすぎます。


伊勢が悪いんでしょうか?

奥さんにだって非があります。

何となく松本清張的教訓の匂いがしませんか?

悪事はバレる。

ましてや、不倫から全てはスタートしてるのだ。

てか、どこにも乱歩らしさのない作品。

ひどく現実的。

小道具の使い方もうまい。


妹は結局、明智小五郎に全てを知らされます。

彼氏と仲睦まじくハッピーエンド。

彼氏におとがめはナシ。

この2つのグループのあまりの結末の違いが
ほんと残酷な天使のテーゼ。

呪われた運命の十字路です。

こんなオトナな話が小学生向けにポプラ社で出てるのです。

乱歩にしては破綻のない作品。
素晴らしいです。