こんばんは。
ミステリ案内人・稲葉の白兎です。
傑作「アクロイド殺し」の話が出たところで、
作者のアガサ・クリスティーや、別な作品について話したいと思います。
私が最初に読んだクリスティーの作品は、
アクロイドでも、
スタイルズでも、
10人のインディアンこと、そして誰もいなくなったでもなく、
オリエント急行でもなく、
ABCでもなく、
「海辺の殺人」。
は?
クリスティーにそんな作品あった?
と言える人は、かなりのクリスティアンであります。
本名は、
「謎のエヴァンス」
または、
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」
です。
どちらにしろ、無名に近い作品。
「海辺の殺人」は、ジュニア向けに翻訳された文庫です。
学校の図書室にあった海外シリーズです。
数あるクリスティーの中から、
「ABC殺人事件」と「海辺の殺人」(謎のエヴァンス)
が選ばれてます。
ジュニア向けだから?
余計なお世話です。
「アクロイド」や「オリエント」を翻訳してくれればよかったのに。
それに、「海辺の殺人」というタイトルは、
あんまりです。o(`ω´ )o
なぜ、原作どおりのタイトルにしなかったのか?
子供をナメるにもほどがある。
だから、随分経ったあとで、
大人向けの翻訳
「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」
を発見した時、めちゃ驚きました。
とは言え、内容が悪かったわけではありません。
変に、子供向け、
と気を使わないでほしい。
実は、普通に「謎のエヴァンズ」を読んだ時、
ジュニア向けの訳と、
そう変わりなかったです。
省略とか、内容の一部変更も
特に感じられませんでした。
じゃあ、なぜ、タイトルを勝手に変えるのさ!!
話が進まないので、あらすじを紹介。
本格物じゃなくて、冒険物。
青春物。
ボビーという、庶民の代表みたいな田舎の青年が、伯爵令嬢・フランキーと、通りかかった事件に巻き込まれるというか、首を突っ込むというか‥。
危ない目に相当合います。
命からがら、ってやつです。
たまたま、ボビーは、海辺の崖から落っこちた、
瀕死の男と出会います。
通りがかりというやつです。
その男は、死に際、
「なぜ、エヴァンスに頼まなかったんだ?」と言って、絶命。
そして、通りかかった男性に
ボビーは死んだ男を託して、場を去ります。
この男の死は、事件性なしとして、
処理されるのですが、
ボビーが検死審問に立ち会ったとき、
死に際に男の持ってた女性の写真と、
遺留品扱いで見た女性の写真が全然違うことに気がつきます。
すり替えられた?
そして、ボビーは、ダイイング・メッセージを証言。
その後、ある日ボビーは、
ピクニックの飲み物に致死量たっぷりの毒を盛られて、あわや殺されかけました。
どうやらボビー君は、被害者について、
余計なことを知ってしまったようです。
死にかけたところを、幼馴染みのフランキーに、助けられます。
このフランキーがなかなかのジャジャ馬で、
ホームズ役になります。
アジト潜入!
そんなこんなで、
話は二転三転し、
悪いやつだと思ってた人がいい人で、
いい人だと思ってた人が、とんでもない奴だった、
ある意味、ベタベタな冒険推理活劇。
そして、肝心のエヴァンスは、なかなか出てきません。
ダイイングメッセージものとしては、優れているし、
ボビーとフランキーの若者コンビが何より秀逸!
ハイジとペーターのような、
彼らを成長させるとこうなるのか、
的な田舎のカップル。爽やか。💗
ノンストップで読めます。
小学生の私としては、海外推理の作品を
違和感なく読めたのは
ありがたかった。
それでも、いくらジュニア向けとは言え、
タイトルは、情けなさ過ぎ。
かと言って、「謎のエヴァンス」では、
小学生が引くとでも思ったのかしら?(笑)
海外に、アガサ・クリスティーあり!
と最初に思わせた、運命の作品です。