こんばんは。

いつも感謝の稲葉の白兎です。

典型的なお屋敷モノの
「能面殺人事件」高木彬光著。

さて、名門C家の本家の2人、分家の5人ですが、
この7人の一族の中に、
血の繋がらない人物がいました。

主治医のカルテを見て、判明したのです。

O型の親からAB型の子供は生まれない、です。

で、この人物は、不義の子、と主治医が
いきさつを説明。本人も自覚してるとのこと。

探偵の追求は、そこでストップ。
実にあっさり、スーパードライです。

これが横溝正史だったら、そうはいきません。
そこから話が広がって、
一族の呪わしい血がどうのこうの、となりそうです。

本文中に、
狂人と病人だらけ、常軌を逸した人の集まりで、
この、本物の子供でない人物だけは、
わりと常識的な人物、という記述があります。

病人はともかく、
狂人は、言い過ぎでは?

確かに本家の2人は回復の見込みのない病魔に冒されてはいますが

少なくとも、それ以外で、
特に強烈な人さえ、
何でそんな言われ方をするのか、わからないほど、真に迫ってきません。
多少、利己的な感じはしますが、
常軌を逸する、シーンはなく、誇張しすぎ。
言葉で、表現するのではなく、
実際、常軌を逸した場面なりを、描写を入れてもらいたいですね。
それは、Yの悲劇もそう。

「気ちがいのハッター家」と言いますが、
多少、だらしない人物が2人と、
専制君主的な人物が1人、悪ガキが1人がいるだけで、あとは正常な範囲の構成員です。
何が気ちがいだかわかりません。

少なくとも、同性愛や、近親相姦に耽る人はいなかったですね。
そこが、乱歩や正史と違う、いい部分ですね。


C家の元当主は、戦後のインフレを予想して、
現金をある物質に変えてしまいました。

それが「82の中の88」「ポーシャ」というダイイングメッセージになりました。

ポーシャは、シェイクスピア「ベニスの商人」のヒロインで、
ポーシャの婿選びのエピソードに、
金、銀、鉛の箱を、候補者に開けさせて決めるというのがあります。
モロッコ王とアラゴン王は、それぞれ金と銀の箱を開けて失敗。

バサーニオが選んだのは鉛の箱。
その中にこそ、ポーシャの肖像が微笑んでいました。
バサーニオは、巨万の富と、才知溢れる美しい花嫁を手にしたのです。

外見によって、選ばざるものは、好機常に到来し、
その選択は常に正しいと。

博士の実験室には、自戒のための、
このシェイクスピアの英文が掲げられていました。

鉛の原子番号は実に82なのです。

では88は?


C井博士は、分家の何者かによって、
命を奪われた模様。
動機は財産?


それから10年後、C博士の弟が、
家宝の能面を被った鬼女が現れた翌日の晩に、
密室で、原因不明の死を遂げました。 

側には能面が落ちていました。

3つの棺の予告通り、
同じ死に方を、他の2人も犯人によって施され、
矢継ぎ早に消え去ってしまいました。

動機は、財産か、復讐か?

この場合、遺産目当てというのは、
意外と少ないのです。

金持ちの家に金があるのは当たり前だから?

潜在的にそれほどお金に飢えてない(笑)。

江戸川乱歩の「三角館の恐怖」も、
遺言状の書き換えによって、
老人たちは、犯人に狙われてしまいましたが、
その目的は、財産の横領ではありません。

しかし、実に意外な動機で、
犯罪は行われました。

人間関係のイザコザですね。😅