こんばんは。

いつものミステリ案内人・稲葉の白兎です。

古典派本格推理作家の御三家

江戸川乱歩
横溝正史
高木彬光

昨日は、その第3の男・高木彬光をご紹介しました。

知名度こそ、先の2人に劣りますが、
どうして、どうして、
作品レベルは、決して負けておりません。

むしろ、純粋な謎解きに徹している分、落差が少なく、安心して読めます。
また、これか〜〜
といった、ワンパターンも少ないです。

生まれこそ一回り若いですが、
活躍時期は松本清張センセとほぼ一緒。
それだけ、デビューが早かったということですね。

バイブルと言っていいほど、内容をほぼ暗記したのが、
「能面殺人事件」。👺

中学生の時、文学少女の親友から、
プレゼントされました。
光文社のカッパノベルスで、挿絵つき。

彼女は、松本清張(点と線)(黒い画集)、森村誠一(高層の死角)貸してくれた人。

表紙のデザインは、
般若の能面が中心で
上に七色の虹がかかり、🌈
「ジャスミン」とローマ字で書いてありました。

中身と完全に一致。

ジャスミンと虹については、あまりに具体的で、そこまでやるか〜って感じです。

さて、探偵役の男が親友に向かって言うセリフがすごい!

容疑者の部屋から硫酸と亜鉛が、
出てきた場面です。

「硫酸と亜鉛を混ぜたら、水素を発生するよ。
そんなことは中学生でも知っているよ、バカにしちゃいかん」


おお、そうなんだ!

さすが工学部。および元薬学部。

私は中学生でしたが、
そこまでは知ってませんでした(笑)。
高木彬光には、常識中の常識だったのですね。

酸化と還元てやつですね。

ここの部分だけで、
高木彬光はすごい理系脳と思えました。


舞台となる家のあるじが、
放射能化学の権威と呼ばれた博士。

かと思えば、能や狂言のウンチクも、
「能面殺人事件」だけに、たくさん出てきます。

般若、静御前、薪能、撞木。

さらに、
シェイクスピアの「ベニスの商人」の引用までもが出てきます。
これのせいで、私は、ベニスの商人だけでなく、シェイクスピアそのものを読む羽目になったのです。

この3つの、一見、バラバラの知識が、
本編のトリックに大いに関わりを持ちます。

ある資産家の当主が、邸内で般若の能面を被った女を見て以来、悩むようになり、怯えていました。
そして、居候の主人公に私立探偵を紹介してくれと頼みます。

ある晩、当主は「例の鬼女が現れた」と
探偵の滞在しているホテルに電話をかけてよこしました。
居候の主人公とその探偵が駆けつけると、
すでに当主は、冷たい死体となって横たわってました。

現場は密室。
被害者のそばには、能面が落ちていました。
そして、死体から立ちのぼるジャスミンの香気。
死因は不明。
心臓麻痺としかわかりません。

という、なかなかスリリングな展開でして‥

これでお分かりの通り、
最初の段階で、かなり、「小道具」の多い作品と言えます。

これが殺人事件と断定された理由は、2つ。

被害者の切羽詰まった内容の電話がかかってきたこと。
もう一つは、その前後にこの家から、
葬儀屋に電話がかけられ、
3つの棺を用意するよう注文があったことが明らかになりました。

これは、連続殺人の予告以外の何物でもないですね。