こんばんは。

松本清張をはじめとするミステリ小説案内人の
稲葉の白兎です。

清張は面白い!

子供の頃は、ハンバーグとかグラタンとか洋食系のものが好きでしたが、
舌の好みが変わって、

寿司、うなぎ、そば、
オトナの舌になってきました。

推理小説も同じ。
パズルがメイン、謎解きがメインより、

清張センセのようなドロドロが、
舌に合うようになってきました(笑)。

昨日の浜名湖ナンタラの短編は森村誠一氏でありまして、タイトルに変に具体的な数字と地名が、清張の傑作「Dの複合」と真逆。

例えば「東経135度の地点」で、全然よかったんじゃないかなあ。

あまりにも前衛的すぎて
あれで、だいぶ惑わされたり、誤解した読者が
いると思います。

さて、小説「下りはつかり」は、鉄道のアリバイトリックの第一人者・鮎川哲也が選者する
鉄道ミステリのアンソロジーです。

10編以上ありまして、
覚えているのが、
横溝正史の「探偵小説」
森村誠一の「浜名湖15‥」
作者不明「見えない機関車」
と、
最後にあった作者不明の「汽笛は響く」。

このアンソロジーで、本格的なアリバイ崩し的なのは、下りはつかりを含め、2、3編。

最後の「汽笛は響く」は、
出てくる鉄道は、プラレール!
おもちゃの。

鉄道ミステリではないです(笑)。

機関車が出たら、何でも鉄道ミステリに入れてしまう強引さがすごい!

でも、ですね、
実は、この最後の話こそ、30年の時を超えて、
記憶に残っています。😀
インパクトの問題ですね。
昨日の、新幹線爆破計画の話もそうでしたが。

作者はほぼ無名。

舞台は、どこかの田舎。
主人公は、老婆。

老婆は家族と住んでいます。
息子と嫁と孫2人。

主人公は、幸せではありません。

なぜなら、家族に除け者にされてるからです。
嫁にいじめられてる?

息子も冷たいし、孫は嫁の教育で、老婆をまったく敬いません。
イタズラ盛りの憎たらしいガキです。

そんな老婆にも、心がキュッとする昔の思い出はあるわけで、
それが、機関車。出会いと別れのシーンですね。

その思い出に浸るため、
ある日デパートで、おもちゃの機関車を買ってきます。
おもちゃと言えど、高級品。
それを自分の部屋で走らせます。
この小説の一番のピークです。

これを眺めてる時の彼女は、
その本当の機関車が走ってた時代に戻るのです。

心の支えのようなものです。
神聖なものでもありますが、
家族は理解しません。
孫に見つかり、早速、ぶっ壊されてしまいます。

嫁は、孫を叱った老婆を、逆に大人げないとなじります。
だいたい、いい歳をして、おもちゃの機関車を買うほうがおかしい、という理屈にすり替えます。

頼みの機関車までもが破壊され
それを謝るどころか、罵られ、
いよいよ孤独感がピークになる老婆。

ある日、老婆を除く家族は、
休日の朝、
山菜狩りに出かけます。

老婆は前の晩、彼らの朝食用に
きのこの味噌汁と弁当を作っておきます。

思いやりのない彼女の家族は、
老婆の分の朝食を残しておきませんでした。

実は、弁当の中身は毒入りでした。

老婆の複雑心極まる復讐劇でした。

せめて、味噌汁を残しておいてくれたら、

食べたら死ぬ毒入り弁当を持たせなかったものを‥

この心情の吐露が刺さります。

昔、ワイドショーのテーマでひと頃やってた老婆虐待を思い出します。

推理小説には、
鉄道ミステリには程遠いですが、

オチはすごいです。

何で鮎川哲也は、この作品をアンソロジーに加えたのかなぁ。

しかも、ラストを飾る大トリに、です。


私も、しばし、ミステリの範疇を離れて
老婆が可哀想すぎて泣いてしまいました。

無名の女流作家の作品ですが、
実に松本清張的。

感想をお待ちしております。