こんばんは。

ミステリ案内人・稲葉の白兎です。

昨日は、床屋さんで起きたホラーの入った森村誠一の「殺意の造形(ヘアー)」を紹介しました。

森村短編は意外とホラー系が多いですね。
化け猫の復讐「禁じられた墓標」とか。

偏執狂の理容師、ということでしたが、

彼が「ヘアーは永遠です」と言った時に、
刑事の運命は
決まってしまいました。


彼の殺意を引き出した刑事にも問題はあるわけで、
被害者と加害者って、
結局、同じ穴のムジナというか、被害者も加害者であるんですよね。

松本清張も短編の名手ですが、
あからさまなホラー系となると、あまり思いつきません。
ゾクっとする話はそれなりにありますが、
異常系は少ないです。

呪い、サイキック、怪奇、といったアイテムが

氏の中で、抜け落ちているからでしょうか。

ただ、「けものみち」のように、
最後はブーメランのように本人にまんま返ってくる話は多いです。

私が読んでて、こわ〜〜、
ヤバイわ、という特に感想を持ったのが

短編の「記念に」。

話は単純です。

ある若い男が年上の女と付き合い、
いい思いをします。

女は、都合よく甘えさせてくれます。

最後は、別の女性を結婚相手に選ぶのですが、

年上女は、怒り狂うわけでもなく、
彼の結婚を祝福してくれます。

元々年上の自分に彼は不釣り合いという負い目があるのでしょうか。

男はホッとします。

修羅場がなかったことで安心します。

ほんと、この年上の恋人は優しくていい女だなあ
と、チラッと思います。
多少の罪悪感はあるかもしれません。

結婚を間近にしたある晩、
その年上女に、誘われます。
最後に「記念に」もう一回だけ会いましょう。

デートするわけです。

多少、男性のムシが良すぎたのは否めません。


納得がいくような、いかないような、
後味の悪い結末が待っていました。



「ええっ!?」
って感じでした。



この女性に共感が湧かなかった‥


何で今さら‥そんなコトを?

ただ言えるのは、
清張さんは、ムシのいい話、人間が嫌いってことですね。(^^;;