こんばんは。
こないだ、話題映画「羊の木」錦戸亮主演
の紹介をしましたが、
ジャンルは
サスペンスです。
仮出所した6人の殺人犯を
富山県の港町「魚深市」で
職に就かせて更生をはかる話です。
その中に、床屋として理容院に就いた男性受刑者
がいました。
一見、すごく真面目な中年男性。
オーナーも理解のある人です。
ところが市のお祭りで
酒癖の悪さが露呈。一升瓶ラッパ飲みして、暴れてしまいました。
大丈夫か、この人?
元々この男性は、客に頭にきて、カミソリで、客の喉を掻っ切ってしまったというのが前科になってるわけです。
それで、ある森村誠一の短編小説を思い出しました。
読んだのはかれこれ30年前。
この時代、一番、森村誠一を読破してました。
このころ、「野性の証明」「高層の死角」
「新幹線殺人事件」
など、長編もよかったですが、
短編がすごくよかった。
数が豊富で
その辺は、松本清張にも似ています。
さて、その名も「殺意の造形(ヘアー)」。
ある偏執狂の理容師の話です。
ある床屋で、理容師が客の頸動脈を切ってしまうという事件が起きます。
転倒のはずみという不幸な事故です。
これは偶然の事故なのか?
殺意はなかったのか?
気になった刑事が、客になってそのお店に通います。
そして、刑事はその理容師が、自分の施したヘアスタイルを「作品」と捉えてることに気がつき、
その熱っぽさに、異常さを感じます。
刑事は実験をします。
日にちを置かず、わざと髪をクシャクシャにして、店を訪れ、反応をみます。
理容師は怒りました。
「なんですか、その髪は!?」
せっかくの私の作品を‥
刑事は、底に宿った異様な眼の光を見逃しませんでした。
その後、喉にカミソリが当たった時、ドキッとします。
来る日も来る日も、わざと仕上がったパーマ髪をツバメの巣のように汚くして、怒らせます。
ですが床屋も、最初こそ怒ったものの、刑事の頭の形が気に入っているので、爆発させずにガマンします。
床屋の怒りがいつ、喉を搔き切るか、
刑事はいつしかスリルを覚え、
それが快感となってきます。
職務を超え、足繁く通います。
髪代もバカになりません。
床屋もオーナーに黙って料金を割り引いたり、
タダにしたり。
「今度、コンテストがあります。いくら腕が良くても、モデルが良くないとダメなんです。
私にとって刑事さんの頭の形は理想です。
コンテストのモデルになってください。
これで優勝を狙います」
そして、渾身の作品を刑事に仕上げます。
自分の作品に惚れ惚れとする理容師。
「今度こそ大事にしてくださいね。もうこんな作品は二度と作れませんよ」
刑事はまたしても、髪をクシャクシャにして、店を訪れます。
こういうやり方、殺意の証明法ってどうなんですかねぇ。
案外冷静だった床屋。
「やっぱり、やると思いましたよ。
もう旦那の嫌がらせには慣れました」
いつもどおりに洗髪し、ヒゲを剃ります。
「これだけは覚えておいてください。
ヘアーは永遠です」
恍惚とする床屋。
この後どうなるかって?
まあ、ブツッてやっちゃうんじゃないでしょうか。
ほぼホラーですよね、この話。
30年前に読んだ時、インパクト強かったです。
床屋もおかしいけど、
それ以上に刑事も狂ってますからね。
ほかに「燃え尽きた蠟燭」
「途中下車」など、
ミステリの枠を超えた作品が
この「殺意の造形」が載ってたアンソロジー集にいくつかありました。