こんばんは。

「ホワイトラビット」に続き、またミステリ関係読みました。
その名も、

「箱の中の天国と地獄」

作者は、

矢野龍王。

ゲームのために閉じ込められた男女数人が、
命をかけた脱出ゲームをする話です。

矢野龍王氏は、もともとニコリなどに、パズル問題を提供しているパズル作家さん。

だから、小説も、パズルの問題っぽい。

この作品のレビューを見ると、

人間描写が薄い、
軽い、
といった批判が少なからずあります。

それは、そのはず。
ゲーム性が強いから、そうなります。

登場人物は、全員10代半ばくらい。


小説の形を成していますが、メインは、人物描写ではなく、
ゲームのスペックが骨幹を成しています。

なので、人物描写が薄い、という批判は的外れ。

人物描写はマンガに近いですが、
多分マンガにするのが難しいから、小説になったのだろうという感覚で読むのがちょうどいいです。
ゲームの内容をメインにしたら、
主人公は誰が誰でもいいのです。

途中で最初のほうのキャラと変わったりして、
さすがに「えっ⁈」
となりますが、あくまでもゲームが主体。

キャラには、目をつぶります。

というか、過去がどんどん塗り替えられます。
案外、性格って、
環境や状況で、
強制変換する場合もあるのでは?(^^;;

このテの作品に、松本清張のような、重厚でリアルな人物描写を求めてはいけません。

デビュー作「極限推理コロシアム」というタイトルに惹かれて読んだのが最初。

こんなのを待っていた!

究極のクローズドサークルものでした。

そして、今回が久しぶりの三作め。

どんな脱出ゲームかというと、フロアごとに二つのソックリな箱が用意されていて、
どちらかの箱を開けない限り、上の階のドアが開かないようになっています。

25階まで登らないと、脱出できないし、
当然といえば当然ですが、制限時間があります。

しかも、このゲームの主催者は、かなり不親切で、そういう選択制の脱出ゲームであるとかのヒントや説明を一切与えず、
全ては、参加者の自主性に任せっきり。

箱の色は7色。
そして、ある種の色の箱を開けると、爆弾が仕掛けられていて、開いた人はお陀仏になってしまいます。

失敗や成功を繰り返すうちに、
箱の色には、意味があることがわかります。

例えば赤の箱には、武器とかが入っていて、
オレンジの箱には、ヒントを書いた紙が入っていて、
緑の箱には、どーでもいいガラクタが入っていて、紫や青を開けると、とんでもない死のプレゼントが入っているというわけです。

アウトかセーフか、確率は二分の一。

箱を開けないことには、ゲームが進まず、
誰が開けるか、揉めることになります。

ロシアンルーレットですね。

くじで箱を開ける順番を決めますが、最初が得とか、後ろが得とか、
一概に言えないわけです。

そして、突然のルール変更があったりして

安全パイと思ってた箱が、ドッカーンもありました。

「安心」するというシーンが
ほとんどなく、
おかげで
ノンストップで読めました。



仕掛ける側と、無理やり参加させられた参加者の攻防がメインです。

カンタンに脱出されては、仕掛け人が困るので、
至るところにワナがあり、

ありがちですが、企図した人物は、
参加者の右往左往ぶりを、どこかで見て楽しんでいます。

こういうのを
リアル脱出ゲーム
と呼ぶのでしょうか。

あまりにも、お金がかかり過ぎてるゲームで、
そこは、見ないフリですね。(笑)

「死」という罰を用意しないで、

参加者の「協力」「成長」を育成するゲームに使ったら、面白いと思います。

ルールを、いかに見破るか、

そこに、この小説の価値がありました。