こんばんは。

山岳ミステリーというのは、かなり美味しい分野、ネタですね。
今さらながら。

最初に「登山」関係のミステリーで、すごく感心したのは、松本清張の「遭難」です。

中学生になったばかりくらいでしょうか。
友達が松本清張の「黒い画集」を貸してくれて、
短編集なんですが、「遭難」は、その最初に出てくるお話です。

その友達は、ついでに森村誠一の「高層の死角」も貸してくれましたが、さすがに背伸びしすぎの感はあって、
ほんの数行で、
断念しました。
漢字、それもふりがな無しの熟語だらけで、
とにかく、漢字が多い印象。
用語が難しいなど、パッと見、とっつきにくかったです。
タイトルからして、そうですよね。
それで、これはもう無理と、返してしまいました。


初の松本清張体験は、
さっきの「遭難」と
「点と線」が最初です。点と線が先だった気がしますが。

点と線は、汚職とか、偽装心中とか、
ストーリーが明らかに大人向けなわけですよ。

違和感はありましたね。

今まで、ポプラ社の江戸川乱歩の少年探偵シリーズとかに慣れてたわけですから。


誰が犯人?ではなく、
どうやってアンタ、これをやったの?
に重点が置かれているわけです。

人間の動きが中心、というんですか?


それにひきかえ、

点と線と同じ作者・社会派ジャンルでありながら、

「遭難」は、いともたやすく、
その小説世界に入っていけました。


同じ銀行に勤める3人の男性が、冬山登山に出かけ、遭難します。
リーダーと初心者は、助かりましたが、中級レベルの男性だけが、救援がくるまでに、凍死してしまいました。
助かった初心者の人が、登山雑誌に、手記を発表し、山とは魅力と同時に恐ろしいところだ、と述べています。

この登山雑誌を読んだ死んだ人の肉親が、
「なぜ、初心者の人が無事で、中級者の弟が命を落としてしまったのか」
と疑問を持ちます。
しかも、3人とも、ほぼ同じ行動をとっているにもかかわらずです。

なるほど、言われてみれば‥

そして、そのメンバーの一人に、
詳しい事情、疑問点を訊くことになります。


実は、巧妙に、その中級者は、死ぬように山でいくつも、伏線を仕掛けられていだのです。

つまり、完全犯罪ですね。

未必の故意‥確率を高める伏線です。


昨日の、こちらは森村誠一ですが、
「醜い高峰」でも、その完全犯罪のワナは仕掛けられました。

話は終盤、

被害者は神主です。

瀕死の女性の面倒を見る謎の男に対して、

「やってられんわー!」

とキレて、一人で下山するのですが、

山のベテラン、学生Bのつけたシュプールを、
ヘンゼルとグレーテルよろしく、ついていくのですが、
それはワザとつけられた「遭難コース」でした。

ロープウエイでの出来事をペラペラ喋られたらマズイので、死へと誘導したわけです。

軽そうに見えて、けっこう悪知恵が働くんですね。

必ず死ぬとは限りませんが、

確率を高めるコースへ誘導したわけです。

おそらく死ぬだろう
多分死ぬだろう
きっと死ぬだろう



「未必の故意」とは、
言わば種蒔きです。

「悪意あるある」


山は、山のベテランにとって庭です!

いかようにも、デザインできます。

そこのあなた、

登山は、信用できる人と、

パーティーを組みましよう。(笑)
恋敵なんてもっての外ですよ