こんばんは。

松本清張氏には、遠く及ばないものの、
いまだ現役で社会派ミステリーを量産し続ける乱歩賞作家・森村誠一。
土曜ワイド劇場の常連であります。

角川のテレビ雑誌「ザ・テレビジョン」の名付け親らしいです。

私は映画の大ヒットもあって、同級生から勧められた「野性の証明」を読んでから、

その時点で発表されていた、
ありとあらゆる森村作品を読破。

この人も、清張さんと同じく、
意外と短編がスゴイ!

青山学院山岳部出身であることから、昨日からもお伝えしてますが、
「山」がよく出てきます。
次がホテル。これは、
ニューオータニでホテルマンとして働いてきたからです。
初期の作品で、山が出ない話があったら教えてほしいぐらい、しつこく山が出てきます。

そうそう、「醜い高峰」です。

タイトルでわかるとおりです。

私の中のキングオブ後味の悪い山岳短編(笑)。

冬山で、5人の男性が、ロープウエイが故障して、そこに閉じ込められる、サバイバルものです。

5人の内訳は

大学生A
大学生B
実業家
神主(最年長)
無口で暗い、ワケありオーラをまとった若い男性

このうち、大学生の2人は、山岳部のザイルパートナー。初登攀目指して躍起となっています。
あとは、互いにまるで知らない同士です。

この5人はたまたまロープウエイで顔を合わせ、
それが動かなくなります。
やがて置かれた状態を悟り、どうやって、この難局を乗り切るか、
相談、協力をしていく話です。
何もしないでいれば、待ち受けているのは凍死でしょうかね。

この5人のエゴ丸出しの人間模様がスゴイ!

山岳部の2人を除くと、あとは山の素人です。
我々に一番近いのは、神主さんですね。
この人が、スタンダードになるわけです。

まず、最初に動くのは、大学生A。
学生と言えど、山のベテラン。
彼の決意は固いです。

「申し訳ないですが、僕たちは、この初登攀に、尋常でない時間とお金をかけてきました。
予定通り、登山を続けます。サヨナラ!(嘘) 」

慌てたのが、実業家。
残りの人たちも慌てたと思いますが。

2人は、毛布や装備を他の登山客にも提供してました。それを持って行かれたら、さア、大変!

「君は、自分の目標というエゴのために、我々素人を置いていくつもりか⁈  
お金なら出す! 君たちを雇いたい。
装備も食糧も買う!」
なりふり構わない実業家。

そこでブレたのがB。

「A、考え直そう。山はまた今度にしよう」

これが明らかなカネ目当て。実業家は100マン円でも出しそうな勢いだったのです。

「貴様、正気か⁈  俺たちの苦労は何だったんだ。
全てこの初登攀に賭けてきたんだぞ。そっちこそ、考え直せ」

この2人が揉めてしまいます。
ドライなのはBの方。
「僕はここに残る。A、勝手にお前だけ行け」

Aにとって、ハラワタが煮え繰り返るとはこのことでしょうか。Bが一緒でないと、初登攀がおぼつかないのです。
まさか、お金でザイルパートナーを裏切るとは。

お互い一歩も譲らず、Aは半ばヤケで吹雪の中を出て行きます。
後味の悪い空気がロープウエイの残りの4人に残ります。

本番はここから。

実業家の鬼畜ぶりが炸裂(笑)。

なんとBから買い取った食糧、装備を他の2人に与えないのです。
Bも、平然としてます。
他の2人の面倒は一切見る気なし。

神主が呪いの言葉をBら2人に投げつけますが、

もう一人の謎の男は、「僕が少し食糧を持ってます」、と神主に分け与えるものの、感情的にならず、どこか超然としています。

この後、4人は、決死の脱出を試みます。

さて、急転直下、4人は、墜落した自家用小型飛行機を発見。

中には重体の若い女性が一人だけ生存していました。
見放してしまおう空気に包まれる中、
例の謎の若い男が、その女性を背中に担いで、
一緒に下山します。
無情なBと実業家は先に行ってしまいます。

話に出てくるこの5人+1人中、
結局、無事に生還できたのは、3人のみ。

私が、この登場人物で一番イヤだなと思ったのは、実業家やBではありませんでした。