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これは、昨日、ファミリーマートで買いたての雑誌型コミックスです。

作者は横溝正史。
作画は影丸穣也。

丸ごと一冊「悪魔が来たりて笛を吹く」の
漫画です。

前に「八つ墓村」のコミカライズを読んで、
映画になる前ですが、

世の中に、こんな面白い漫画があるとは!

と夢中になりました。

作者もまさに影丸穣也さんでした。

小学生の時に読んだので、
絵が上手い、と思えたのです。

今、見ると、そんなでもない。笑

子どものときに遊んだ近所の公園が、
大人になって改めて見ると、
「狭っ!」
と思うのに似てると思います。

ちょっとゴルゴのさいとうたかをさんの絵に似てますよね。

この漫画の欠点は、
主人公・椿美禰子(みねこ)の絵が
可愛い女の子になっていることです。

これでだいぶ、損をしてます。
この漫画家は、原作の良さを知らないのかな。

この漫画の美禰子は、イラッとしますね。

原作でも、テレビでも、
美禰子は不美人という設定になってます。

TBSテレビの古谷一行・金田一耕助シリーズでは、美禰子役は檀ふみさん。
すごく、合ってました。

美人ではない檀さんがやったから、よかった。
原作でもテレビでも、この美禰子に同情、共感を覚えることができます。

この人は、八つ墓村で言うところの、
寺田辰弥にあたるヒロインなのです。
自分の置かれた、悲劇的な立場を理解し、自分の血筋を含めて正面から取り組む役なのです。

彼、彼女を通して、我々読者は、同じ冒険をするのですから。

寺田辰弥は、一介の平凡なサラリーマン。
それが、岡山県の八つ墓村の関係者から、相続問題のことで帰ってきて欲しいという、
奇っ怪な有無を言わせぬお誘いが。

美禰子は、麻布の椿子爵のお嬢さま。
しかし、父である椿子爵は、どういうわけか、
銀座の天銀堂宝石店で、従業員が怪しげな訪問客によって、大量毒殺させられるという凶悪事件の容疑者にさせられてしまいます。

単にモンタージュ写真に似てるというだけで。

ちょっとあり得ないですが。


椿子爵は容疑者となるわずかな時間差で失踪。
椿子爵は、音楽家でもあり、「悪魔が来たりて笛を吹く」という妙なタイトルのフルート曲を作曲、リリースしたばかり。

そんな美禰子さんの周りで、お屋敷の中で不可解な出来事が次から次へと起こります。
二十歳前の多感な時期の美禰子さん。

漫画の彼女は、妙に可憐すぎて、
同情どころか、
いちいち悲しがって、ウザい。

金田一に抱きつくシーンまで出た日には、
オイオイ、と言いたくなります。

そして、それとは別に、
菊江さんという、若いサバサバした女性が出てくるのですが、
彼女の容姿がかなり雑に描かれています。

菊江さんこそ、美人に描かないと、話がおかしいです。

この菊江さん、読者共感度がかなり高い。

ろくでもない人間が多くいるお屋敷の中でも、
彼女の達観した世慣れした存在は、清涼剤になってます。

テレビでも彼女のシーンは、目で追ってしまうほど、存在感がありました。

3回目以降、急に出番が減って、寂しかったです。

そして、漫画でできる表現力の限界を感じたのか、
肝心の
フルートを吹くシーンが皆無。

この原作は
タイトルと言い、音楽と言い、
フルートがすべて。
それ、省略すると、マズイです。

ですので、映像化にどちらかというと、軍配が上がります。

しかも、この漫画家は原作を曲げて、
お種さんという女中をオリジナル路線で
違う使い方をしています。

詳しくは言えませんが
かえって、逆効果でしたね。

それにしても、
美禰子は、まるで映像と違ってましたが、
犯人のルックスは、キャストを知ってるかのような、ソックリさ。

八つ墓村はあれだけ面白く描けてたのに。

漫画にするには不向きな作品でしたかねえ。

美禰子を可愛く描きたい気持ちはわかるのですが、(笑)
センチメンタルになり過ぎて、
シラけてしまいます。

この話は、横溝ミステリの真骨頂である血筋問題の、
近親相姦がメイン。

家系図、登場人物の

リストさえ作れば、

すごーく、わかりやすくなります。

犯人も、動機も。

このヒトの子どもは誰?

このヒトの親は誰?

この一家の代表者・椿子爵が、
いつの間にか、
家での権力を失い、絶望し、
失踪するあたりは、Yの悲劇の裏主人公
ヨーク・ハッターによく似ています。
二人とも、繊細過ぎ。弱すぎ。

だから、それぞれ、化学なり、音楽なりに逃げたのでしょうか。
それぞれ、ある者は、憎い人物を殺す推理小説の筋書きを書き、
ある者は、絶望の原因となった、悪魔の申し子を告発するフルートの作曲と、その出生場所でメッセージを残しました。