こんばんは。
松本清張歴史小説の短編「武将不信」。
タイトルがまず「？」ですよね。
中身も負けず劣らず、
不信だらけ。
ある武将の家の悲劇を描いてあるのですが、
昨日、放送したばかりの
「女城主直虎」の内容とかぶります。
徳川家康は、同盟者織田信長に大変に気を使っていました。
当然ですね。信長にはいくら気を使っても使い過ぎることはないというくらい、慎重な対応を要すべき人物です。
怒ると怖いですからね。
昨日の放送分は、家康が信長に気を使い過ぎてる真っ只中の時の事件を描いてます。
信長へのその機嫌取りが裏目に出たと言えそうです。
それは、信長から妻子の処刑を言い渡され、処分した事件です。
正妻の築山殿は、武田へ内通したかどで家康の命を受けた石川数正に斬られ、
長男・信康もそれに連座して切腹させられたというものです。
これは、謎の事件とされ、どこまでが本当かよくわかりません。とにかく、妻子が処分させられたのです。
信長が本当にそれを命じたかも不明と言えるのです。
ただ、信康の嫁と築山殿とはうまくいってなく、
その嫁は徳姫という信長の娘です。この嫁が築山殿のことを、ありていに言えば信長にチクったのです。
義母が夫に側室を迎えさせ、徳姫を怒らせた。
そンなこと聞いたら、
信長も怒りますわな。
表面上は武田との内通と、なっていますが、
実はもっと人間くさく、徳姫のチクリが信長を怒らせたというのが真相かもしれません。
信康がよくできた男子というのも、内心面白くなかったとか。
家康親子は、信長の前で、秀吉のようなバカな振りを演出できなかったのですね。
そこが、お坊ちゃんの限界と言えそうです。
ドラマでは、家康の信長に対する異様な気遣い損みたいな悲劇で終わってました。
で、やっと「武将不信」です。
これは、東北の大名、最上義光の悲劇です。
義光は、伊達政宗の伯父に当たる人。
この義光と家康の関係は、
さっきの信長と家康の関係に似ていました。
もっと言うと、家康は、自分が受けた理不尽な仕打ちを、最上義光親子に、仕向けたのではないでしょうか。
ストーリーはこうです。
義光は、家康に取り入ろうと必死で、
次男を養子に差し出します。
長男はお気に入りだから、次男を出しました。
でもそれは、家康に見抜かれていたかもしれません。
家康は、ぜひ、次男が家督を継いだ方がいいと勧めます。
長男をどうするか実験しているようです。
先回りして、義光は、長男を追い出し、結局殺してしまいます。
まったくわけがわかりません。
義光の先読みも、家康の難題も。
井伊家も領主の今川家にそういうことを何度もさせられてきました。
家を残すことが大事だった時代です。
人の家督問題に領主が口を挟み、犠牲者という人柱を、要求するのです。
家康のことですから、自分がかつて信長にそうやってきたので、義光の媚びもすべてわかっていました。
悲劇なのは、尽くしているのを利用され、その犠牲に対し、まったく省みてもらえないことです。
よせばいいのに義光も悪いんですよね。
いつか、良くしてくれるだろうという期待は裏切られ、最悪な要求をされます。
清張の歴史短編は、苦さに満ちてますが、
この「武将不信」はそのあらゆる短編の中で最たるものです。
泣けます。
家康は、そう考えると、ちょっとヒドイですね。
自分のトラウマを最上親子に仕向けて晴らす。
自分も上級生になると、その受けた理不尽を後輩に回す。
永遠に終わらない負の連鎖です。