こんばんは。
江戸川乱歩の最高傑作いよいよ、斎藤と蕗屋の「心理試験」、ファイナルステージです。
斎藤という、生け贄があったにもかかわらず、
天才犯罪者は、策士、策に溺れるが如く、
知らないうちにヘマをやらかしていました。
心理試験さえ受けなければ、斎藤が捕まっていたかもしれません。
危険ワードに早く答え過ぎて、明智に怪しまれてしまいました。練習したことを見抜かれたのです。
刑事コロンボのように、明智は、蕗屋を有罪に追い込むために最後のワナを仕掛けます。
斎藤と蕗屋は同じ大学に通う同級生。蕗屋は、自分を天才と信じ自惚れています。斎藤の話から大家の老婆が植木鉢に隠した大金の存在を知り、完全犯罪を企てます。斎藤を通じ、老婆と顔見知りになっておきます。犯行2日前に老婆を訪ね、下見をしておきます。縁日で手に入れたナイフを持って白昼の犯行に及びます。
首を絞めて殺害した後、念のためナイフで座布団を当てて刺します。
蕗屋が覚えているのは、老婆が絶命する寸前、爪が、立てかけてある屏風の六歌仙の小野小町の顔をわずかに引っ掻いたことだけでした。
前回の連想診断の写真の結果を見てください。
蕗屋が答えているワードです。
斎藤は情緒的な答えが多く、蕗屋は即物的。
明智は、蕗屋を呼び出し、斎藤が重要参考人として連行されたと嘘をついて、油断させます。
そして容疑者にして悪かったと、斎藤が連行されたいきさつなどを話し、老婆の財産整理人を紹介します。そして、話のついでに、老婆の甥と整理人の間で、金屏風のキズの事で揉めていることを話します。
蕗屋は斎藤が捕まったことを知らされ、すっかり上機嫌です。明智に、
ついでに屏風のことについて聴きたいと言われた時には、蕗屋の中で、アブナイ事以外は、できるだけ正直に話そうと決めました。
浮気を隠そうとする旦那さんみたいな状況ですね。(笑)。そのほうが安全だと。
問題の金屏風は、殺人現場に二つ折りに立てられていました。六歌仙の小野小町の顔にキズがあるなしで、屏風の財産価値がかなり違ってくると言うのです。
蕗屋さん、ついでに協力してください。
蕗屋は、屏風と聞いてヒヤッとしますが、
いいですよ、僕は事件の2日前にお婆さんを訪ねましたが、屏風は覚えています。六歌仙の小野小町ですよね、確かにキズはありませんでした。
そうですか、それはよかった!ではご迷惑でも証言して頂けますか? その屏風の持ち主が実に欲深いやつで‥。
以前のブログの写真の下から2番目の「絵」というワードを見てください。
あなたなら、「絵」で何と答えますか?
蕗屋は、「屏風」と答えています。斎藤は景色。
ちなみに「絵」は危険ワードではありません。
危険ワードではないのに、無意識に決定的なことを答えているのが、心理試験の怖いところです。
「屏風」と答えるのは、かなりレアなケースではないでしょうか?
それは、最近、本人が屏風と遭遇したことを表しています。
では明智の決め台詞をどうぞ。
蕗屋さん、やっぱりあなたは屏風を知ってましたね。「絵」という問いに「屏風」という特別な答えかたをしているからです。
よっぽど屏風が印象に残ってたんですね。
心理試験の結果からあなたは無邪気に知ってる事を答えてくれると疑いませんでしたよ。
どうも困ったことになりました。あの屏風が老婆の部屋に持ち込まれたのは、事件の前日なんです。なぜあなたは見てもいない小野小町の絵を
2日前に見たなどと言うのです?
ことに六歌仙の絵を覚えていたというのは致命傷ですよ。
あなたは勘違いをしたのです。
事件当日に見たものだから、2日前にも当然あると思ってしまったんですね。
" 心理試験の真の効能は、嫌疑者が、ある場所、人、モノについて知ってるかどうかを試す場合に限って決定的だと言っています。
今度の事件で言えば、蕗屋くんが屏風を見たかどうかという点がそれなんです "