こんばんは。

犯人は斎藤か、蕗屋か?

「心理試験」は、倒叙という形式で書かれているので、
最初から犯人は、読者にバラしています。

このやり方は、
例えるなら、刑事コロンボ。
最近ではフジテレビの古畑任三郎。

殺人をやるところから見せて、やがて警察が来て、関係者に話を聞いて‥。
うまくやり過ごすはずが、感の鋭い刑事に怪しまれて、しつこく矛盾点を突かれてジ・エンド。

不思議なのは、刑事コロンボの犯人には同情が湧かない、気持ちが刑事寄りになってしまいます。

古畑任三郎は、犯人に同情が湧くケースも。
それは被害者が憎たらしい場合。
うまく逃げられますように。

倒叙推理は、普通は後者の感情になるのが一般的だと思います。

犯人が悪い奴でも、です。

やはり犯人目線で書かれているからでしょうか?

というより、行き詰まる心理戦にドキドキしてしまうんですね。

犯人は挑戦しているのです。

自分の運命に。

さて、「心理試験」の悪の主人公・蕗屋清一郎も、例外ではなく、天才的な部分に感心してしまいます。

江戸川乱歩には、こういう誇大妄想的な、自己チユウ的な犯人がよく登場します。

蕗屋の行動は大胆で頭がいい。

凶行の2日前、目指す植木鉢のお金が移動してないか、確認した。
変装はなし。凝りすぎると、あちこちに痕跡が残り足がつきやすいとか。

老婆を殺し、首尾よく床の間の植木鉢に隠された油紙をほどいて、その中のお金を盗む。
ただし、半分だけ。
なぜ半分かというと、いくらお金があるかは、老婆以外知らないので、お金を全部取らず、
半分残しておけば、元々お金はそのままだった、というシチュエーションが成り立つ。

その盗んだお金を交番に届ける。
永久に持ち主は現れないので、一年後、確実にお金を受け取れる。
しかも、大金を預けてあるので、なくなる心配や浪費のリスクも押さえられる。
まさか、盗んだお金を交番に届ける犯人はいないはずという、大胆な発想。

凶行は昼間をあえて選ぶ。

などなど、危なげなし。

ところが、容疑者にされてしまうのです。

それは、友人・斎藤のせいです。

第一発見者は斎藤でした。この人は蕗屋とは反対のタイプ。

なんと、つい、植木鉢を調べて、いくらかお金をフトコロに入れてしまいます。
運の悪いことに、身体検査をされて、お金のことを追求されます。
そして、喋ります。

斎藤は老婆の経営しているアパートに下宿してました。ひょんなことから、溜め込んだお金を床の間の植木鉢に隠してあることを知ります。
そして、それを蕗屋青年に教えたことも話します。
事件当日、蕗屋が謎の大金を拾い、交番に届けた事実が浮かび上がります。
これはすごく大事なことだと捜査官は思います。
これは偶然だろうか?

斎藤のヘマで、蕗屋は無色でなくなったわけです。
結局、他に容疑者もいないことから、斎藤と蕗屋に心理試験を受けさせようという話になります。

そこは、天才的な蕗屋のこと、あの手この手で心理試験をパスしようと、考えを巡らします。

続きはまた明日。