こんばんは。

ミステリー案内人、稲葉の白兎です。

江戸川乱歩こそ、ミステリーの入り口に連れて行ってくれた、最初の原体験です。
私にとって、乱歩の少年シリーズは、日本昔話、
イソップ童話、アンデルセン童話のようなものです。

今の子供って、江戸川乱歩を読むのかな?

シャーロック・ホームズとか、アルセーヌ・ルパンとか、子供向け全集を読んでいるんでしょうか?

夏目漱石とか宮沢賢治すら、知らない人が多いような気がして、しょうがないです。

「影男」は、ポプラ社の乱歩シリーズの中でも、
異色作で、すごく印象に残っています。
主人公の影男をはじめ、殺人請負会社の社長、
地下に見世物ワールドを作り、希望があれば、
〇〇請負業もしてくれるという、中高年紳士。
この第3の男は、2人に比べると、犯罪なのかどうかわからないくらいユルめの業者です。
でも、広告を打つわけにいかないから、やっぱり裏稼業です。
こうして影男を中心とする三者三様の異様な犯罪者たちが登場します。
最後は、3人が集結します。

現実世界ではあり得ない犯罪を生業とする3人の男。ちょっとしたロマンです。

怪奇、猟奇、狂気の乱歩ワールド。

江戸川乱歩作品には、倒錯趣味が目白押しですが、
少し、まともな作品もあります。
切れ味バツグン、評価も高い短編作品が
「心理試験」です。
これは、「地獄の道化師」にたまたま入っていた作品です。
地獄の道化師よりも、よくできた作品です。

地獄の道化師は、犯人がすごく意外で、納得できかねる部分がありましたが、「心理試験」は、
最初から犯人がわかっている、刑事コロンボのような倒叙形式の作品です。

 すごくスッキリした作品で、私の中ではベスト5に入ります。

動機も金目当てとシンプル。
登場人物も、エゴイスティックな蕗谷という大学生と、気の弱い斎藤という学生と、被害者と、明智探偵の4人しか出てきません。

心理試験とは、嘘発見器と同じです。
例えば、言葉から、連想される単語を、パッパッと答えていくというもの。
その言葉には、危険ワードが混ざっており、
仮に犯人がこのテストを受けたら、答えるまでの間に、汗をかいたり、時間が他の言葉よりも長くかかったりして、心理的に痕跡が現れるというテストです。

心理試験の弱点を突いた作品です。