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「三角館の恐怖」のクライマックス、
蛭峰両家族は
悪い泥棒を捕まえるために、明智の言うとおり、各持ち場を与えられ、配置されます。
それはもちろん、囮(おとり)です。
犯人を一人にして、動きやすいように、

これは、チャンスだ!

と、思わせるための明智の作戦です。

ラストチャンスだぞ!  きみ

犯人は必ずや、ドサクサに紛れて、引き出しのある部屋に直行するはず。


財産を半分蛭峰康造側の遺族に譲渡するという、新しい遺言状を奪いに、犯人は捕り物に参加して
いるのです。

いつ、動くか、誰が動くか?

行き詰まる瞬間に、胸の鼓動が速くなって、
これは、明智の作戦であると同時に
作者の作戦でもあるのです。
最高のクライマックスを用意したのです。

エレベータの密室といい、なかなか全体にメリハリが効いていて、心憎いです。

それにしても、犯人は何をそんなに焦っているのか?  財産が双子の兄弟の間を行ったり来たりの中、
半分いくだけでもイヤみたい。
半分‥誰にも損はないようだけどね。

そして、ついに、犯人は引き出しに手をつけたところで、御用となりました。
その時、取り押さえに加わった家族のひとりが
「おお!  きみが犯人だったのか!」と叫ぶシーンが印象的。

私にとっても、全然、眼中にない人物が犯人でして、100%驚きました。
小学生ですから、犯人、当たったためしがない(笑)。
明智の説明は、明快なもので、心地よかったです。犯人に驚けるのは幸せです。
しかし、当時の私は、その動機の深さまでを理解するには若すぎました。

「お金でシアワセは買えない!ヒトの気持ちも買えない!」

動機は実に松本清張的だ!

ドロドロのどうしようもないやつ。

冒頭の写真は、光文社文庫。シリーズ第18巻。
「影男」が収録されているので
買ってしまいました。
三角館は、第15巻にそのままのタイトルで発売されています。