こんばんは。

「三角館の恐怖」の続きです。

双子の兄・健作は、心臓病が悪化して、明日をも知れない命。
弟・康造より先に死んだら、財産はすべてあちらに移動し、ニートの2人のどら息子たちは、路頭に迷ってしまいます。
ついに健作はかわいい息子たちのために、弟に頭を下げに、左手の住居に出向きます。

「わしらは長いこと仲が悪かったが、どうか今までのことは水に流してほしい。先代もまさかこうなることを願ってなかったはず。どうだね、生き残ったほうがその遺族に半分財産を与えるというのは?」
私は子供心に、健作老人の悲壮感に心を打たれたものです。
ところが康造は真剣に取り合おうとしません。
健作は焦ります。
「お前はわしより長生きする自信があるからそういう態度なのだ。仮に立場が逆になったらどうだ?
お前も自分とこの良助がかわいいだろう?」
「だとしても、私は先代の意思を尊重したい。この件については時間をかけて検討する余地がある。また後日ゆっくり話し合おう」

康造は返事を保留にしました。
健作はガッカリ。
もはや、奇跡が起きるのを待つのみ。
賢い弟は、健作が長くないのを見抜いていました。弟からしたら今さらムシがよすぎると思ったかもしれません。

それでも康造は念のため、養女の婿に意見を求めました。婿は両蛭峰家で唯一、事業で収入を得ています。「あいつは先代が汗水垂らして作り上げた財産をバカ息子に蕩尽させようというのだ。どんな大金もあの2人にかかったらたちまちなくなるぞ」
すごい言いようです。そういう青年たちという事です。
婿は、「僕もお父さんに賛成です。ここはムリに善人面をする必要はないと思います」
「そうか。では正式に断ろう。これで吹っ切れたよ。
ところで、それとは別にもう一つ、お前の知恵を借りたいのだ」
康造老人はあることに悩んでいました。
それは彼の金庫から、最近、小額のお金が何者かによってチビチビ持ち出されているというのです。邸内に小銭泥棒がいるのです。、
「それは奇妙ですね。この家からお金を取ろうと思えばいくらでも取れるのに」
「金額は大したことないが放置するわけにもいかない。どうしたものか‥」
「千円札に目立たない印をつけておくのはどうです?  そのお札を持っている人間が犯人です」

資産家の家にいる小銭泥棒。すごいギャップです。誰がなぜ、そんなことをするのか?

康造老人は二つの案件が片付いて安心します。
健作老人は絶望に打ちのめされています。

そして、その晩、99%勝利を収めるはずの弟は、何者かに殺されてしまいました。