こんばんは。

大久保長安という、佐渡の金山奉行の名前は聞いたことあるでしょうか。

活躍したのは江戸時代初期。

元々は各地を転々とまわる旅芸人の猿楽師でした。名前は藤十郎。

家康に見いだされ、金の鉱脈を当てる才能を発揮。

ついに金山奉行となり、巨万の富を築きます。

松本清張の「山師」という短編に、彼の生涯が書かれています。
これは昨日紹介した短編集「武将列伝」とは別の本に入っておりますので、念のため。

日本史の授業に出てきたかどうかわかりませんが、金山奉行ですから、大学受験を日本史で取る人には、重要な人物かと思われますが‥。
大河ドラマ「徳川家康」には当然出てきたはずですが、全く覚えておりません。「鬼作左」がいなくなってからドラマが面白くなくなったので。
それはともかく、幕府開設後の後期・徳川家康が出てくれば、この大久保長安も出てくる可能性は高いです。

大久保長安を知ってるという人は少ないです。
日本史の先生も下手な授業をするくらいなら、大河ドラマを見せたほうが早いです。
脚色されていても、感情による全体像をつかみやすいです。
もともと、大河ドラマのおかげで、こうして歴史人物を語れるのですから。

さて、大久保長安の運命やいかに。
金山奉行として、大出世、巨万の富を築く‥
今までのブログで紹介した各人のストーリーを、あるいは、
清張先生の本を少しでも読めば、万々歳で終わるわけはない‥!(笑)。

彼がどういう人物かというと、先の千利休と同じパターンと言えば、一番理解しやすいかと思います。
下層から成り上がる→権力者に仕える
→増上慢になる→権力者に挑戦→首チョンパ

利休は、秀吉の師匠及び親友のような間柄であることから、勘違いを犯します。
どこかで、秀吉より自分のほうが人間が上である、と言いたくなります。口で言うわけにいきませんから、芸術を利用します。
派手好みの秀吉に対抗して、「地味」を全面的に押し出します。
秀吉も芸術だから、と最初は我慢していましたが、相手の真意が読めてくると、罰するしか方法がなくなったわけです。
大久保長安も最後は同じでした。
権力が絶大になるにつれ、感覚がマヒしてきました。
同時に不安にもなります。自分の生殺与奪を握っている家康に対し優越感を持ちたいと、持たなくては、と考えました。
家康をバカにする方法を見つけました。
家康は地味です。地味への対抗手段は、派手になることでした。
家康の嫌がる派手なことを、華美な生活、浪費をしました。栄叡栄華ですね。
やがて怒りに触れ、一族もろとも断罪されました。

二人は、もっと早く気づくべきでした。
相手の怒りに触れる頃には、自分の賞味期限がとっくに切れてることに。
利休が重用されたのは、織田信長の茶頭だったから。信長のマネしたがり屋の秀吉は、利休を従えてることが諸侯に対する自慢のタネでした。ブランドのバッグを👜身につけたがるのに似ています。
家康はもっと実利的です。金銀の産出で幕府の財政が潤うに越したことはありません。
長安が華美に耽ける頃には、ほとんどの鉱山から金銀は掘り出されていました。

鉱脈当ての名人・大久保長安の「山師」も、鉄砲名人・稲富直家の「特技」も道具の悲哀を描いた作品です。
悲哀というと、ロマンチック過ぎて適切な表現ではないかもです。
彼らは権力者から見たら、その人物にとってよほどかわいくない限り、才能や特技はただの道具なであり、使わなくなったら、捨てるまでです。
直家は最終的には自分の特技を客観視できました。職人は武士には向かないことに。

特に文学的筆致もでもって描かれた、鉄砲名人の「特技」はゾっとする表現が多く、味わい深い作品でした。