本多正純、石川数正、丹羽長秀‥
これら戦国乱世を生きた武将たちのさまざまな「栄光と挫折」を紹介してきました。
彼らのストーリーが入った短編集が、この
「武将列伝」に
収められています。
松本清張の本は、ブックオフでも、カンタンに見つけられます。品揃えもたいていの店で豊富ですので、ぜひ、探してお読みになることをオススメします。
昨日の「千利休」は、これとは別の短編集、
シリーズ「小説日本芸譚」のみ、このシリーズは11人でセットなので、単品でほかの短編集には載ってないかと思われます。
「武将列伝」は、短編なので当たり前ですが話が短くて、読みやすいです。
マイナーな武将が多いですが、その人生のハードさは、あなたがサラリーマンであれば、メチャメチャ共感、同情、できるものです。
丹羽長秀には、共感、同情しやすいですね。
清張さんの目のつけどころが何より素晴らしい。
丹羽長秀を選んだところもそうだし、その身近さ、善良さがいいですね。
オールマイティーで、常にベストの選択をしてきた、織田家臣の優等生・丹羽長秀。
同じ織田家中の武将に例えるなら、前田利家に近いものがあります。
前田利家も、ベストな選択をした秀吉関係者と言えます。
利家と違うのは、彼は、割り切りができなかったことです。
後の丹羽家の取り分が大きく変わってしまいました。前田家は割り切ることで、加賀百万石の大大名として、その名を後世に残しております。
でも、丹羽家の知名度はいかがでしょうか?
清洲会議では、ベストな選択をしたはずです。
滝川一益、柴田勝家は、負け組になったのですから。
本多正純‥反面教師というよりザマーミロ感満載です。(笑)。作品名は「戦国権謀」。
「群疑」の石川数正。
この人は家康の家来の筆頭だったのに、
徳川四天王に入っていないのはなぜか?
気の毒としか言いようがないです。
イタイです。
ほんのココロのすき間としか、言いようがない。
さらに、もっともっと気の毒で、読んでるこちらが辛くてしょうがない作品があります。
仙台藩の伊達政宗はご存知でしょうか?
片目の、あの「独眼竜政宗」のことです。
「武将不信」は、その政宗の母親の兄にあたる、最上義光の話です。
つまり、伊達政宗の伯父さんです。
渡辺謙さん主役の「独眼竜政宗」は、大河ドラマ史上でも、高視聴率の代表ですが、このとき最上義光を演じたのは、個性派俳優の故原田芳雄さんであります。
主人公が伊達政宗なので、最上義光は、必要以上に悪く描かれていたようです。
というのも、このドラマを見た人は、絶対に最上義光を良く思うはずがないからです。私もその一人でした。
政宗の母親は政宗が嫌いで、なんと息子の毒殺を図るのです。
母の意図を見抜いて毒殺は失敗に終わりましたが。そんな感じで、政宗と義光の関係も悪かったです。
政宗と義光はよい関係ではなかったので、好感が持てない、一種の先入観が植え付けられていました。
その先入観で「武将不信」を読んだので、あまりの義光の印象の違いに驚いてしまいました。
「武将不信」という物語に限って言えば、徳川家康との関係の話です。
これを読むと、当然ですが、家康の印象は悪くなるでしょう。
どこに主軸を置くかで見方が変わるのはよくあることなので、ヒドイ! と思うのも短絡的ですが、本当にコレは、「事実だとしたら」、
残酷物語です。怪談レベルです。
解説できないです。(笑)。
さて、「特技」という話も、ある程度残酷でありますが、10篇あるうちの中でも、奥の深いすぐれた作品であります。
タイトルどおり、自分の「特技」が、良いようにも悪いようにも作用する話です。
「人生の光と陰」とはよく言いますが、この光と影は、常にセットであります。
光だけの人生も影だけの人生もないし、もし光が強烈に人生に差し込んだら、その闇の深さもそれなりの規模なのです。
影は要らないです、って遠慮しても(^^;、それはムリなようです。
「特技」の主人公は、稲富直家という、細川幽斎の所にいた鉄砲名人の家来の話です。
どこの大名も、直家を欲しがったレベルです。
つまり、技術者というものを突き詰めた話なんですけども、最初から、直家には、奢り、みたいなものを出しているんですよね。
控えめなんですけど、奢り、なんです。
その控え目がアダとなって、2代目の主君・細川忠興を怒らせるエピソードが最初に出てきます。
鉄砲で獲物を取った数が常に主人よりも少ない。
主人は、あまりにもそれが度重なるので、これは自分へのへつらいで、手加減しているのではないかと勘ぐって、ある日の狩猟後問いただします。
「鉄砲名人のそちが、何でいつも2番なのだ?それとも名人というのは詐欺なのか?」
結果は手加減ではありませんでした。
ただ、獲物の数で一番ではないのは、命中精度にあり、それに集中したからだと直家は仕留めた鳥を見せます。なんと心臓のど真ん中に命中しているのでした。おそらくどの獲物も‥。
この時の、細川忠興の反応は、良いものではありませんでした。口では、さすがと褒めつつ、内心、小癪な奴と思われてしまったのです。
むろん、直家には悪気はなかったのですが、果たして、一瞬でも、その技術の正確さを自慢する心がなかったかどうか‥。
やがて、関ヶ原が始まり、彼ら主従の間に破局が訪れます。その事情は省きます。
彼はその才能ゆえに、どの家からも欲しがられるのですが、細川が許しません。
やがて家康が彼を雇います。これには忠興も文句が言えません。
直家はやがて、技術だけが独り歩きして、尊敬されつつ、憎まれるという、複雑かつ深刻な事態に陥ったことに気がつきます。
ほんとにこの作品は逸品です。
読んだあなたは、フツウでよかった、と安心できると同時に、それを雇う権力者の心情にもゾッとすることでしょう。
