安心してください。
犯人の名前を言うつもりはありません。
そもそも、この話は、犯人当て、とかのジャンルではありません。
いかに、かわいそうな女性と、汚職犯人の濡れ衣を着せられた男が、心中に見せかけて殺されたかを刑事が追う、という過程がメインの話です。
私が、松本清張作品で、一番最初に読んだのがこれです。
果たして、この出会いは、いい出会いだったのか?
早く出逢えばいいというものではありません。
どちらかというと、早過ぎた出会い⁈
何しろ小学生ですからね。社会派推理は早かったかな、とは思います。まだまだ名探偵コナンのような謎解きで遊んでいたいお年頃です。
ただ「時刻表トリック」というだけで飛びついたのです。
この話は、犯人が時刻表マニアでないと、思いつくことが無理めのトリック。
何しろ、再三言うとおり、ホームに電車がいない空白の4分間に13番線を歩いている無関係の男女を、犯人が知り合いを連れてきて、目撃させるというもの。
成人してから、一度読み直しています。その時の感想がこちら。
「始めから、犯人らしき男がわかっている時点で期待値が半分。時刻表を酷使し盲点を突くトリックではない。心中トリックはありふれているし、4分間のトリックも現実味が薄い。4分間に頼りきるところがモロい。犯人も〇〇されないのでスッキリしない。長所は題名」 と、まあ、身も蓋もない感想。
「あれ、□□さんじゃない?」
「ほんとだ、お連れさんがいるみたいね」
なんてプラットホームで言わすの、実行可能なのかな。殺人より難しい、と思うのですよ。
連れてくるのも、その4分間という枠で、相手の行動をコントロールするなんて、少しでも狂ったら、将棋倒しに壊れてしまいますよね。
電車は信じられても、人間の行動はどうでしょうか。
電車のアリバイトリックはやり直しが効かない‥このリスクは大きいはず。
「火と汐」という作品は、もっとすごいです。
「点と線」の海上バージョンです。ヨットを駆使したり水に潜ったり、トライアスロンよりハードですよ。私はこんなの実行に移す気ゼロですよ。他の人だって、ねえ。犯人は努力家すぎます。
「点と線」‥社会派推理ですから、社会背景と登場人物のドロドロがメインではあります。このドロドロと時刻表マニアの机上の空論が見事に融合されるわけですね。