「家政婦は見た!」
ごぞんじ市原悦子主演の人気テレビドラマシリーズです。
市原悦子さんはこのドラマを機に演技派として、世間に知られることとなりました。
このドラマ、原作が松本清張って、知ってました?
意外ですよね。
辛辣ながらも、あのコミカルさ、清張っぽくないですよね。
清張は、全作品を通じコメディーはまったく書かないですし書けない? 笑いの要素が皆無。笑える会話もなし。
犯罪小説ではないし、すごく意外ですよね。
原作は「熱い空気」。中編です。
さすがに第一回の放送から、あのコミカルさはありませんでした。原作に忠実なのです。
DVDを借りて見たのですが、市原さんがメチャクチャ若くて、初回が相当昔に放送されたのがわかります。
主人公は石崎秋子という独身の40女。
これはつい、テレビシリーズの名前を出しましたが、もしかしたら、「熱い空気」では違っているかもしれません。
とりあえず、秋子さんで。
彼女は家政婦紹介所から派遣され、派遣先で、その家庭の欠陥みたいなのを発見すると満足して、次の派遣先に行く‥というやり方で、
趣味と実益を兼ねて、秋子さんは働いていたようです。
暗いと言えば、暗い、趣味がいいとはいえません。それは秋子が孤独で不幸だからです。
自分に家庭がないから、他人の不幸を、確認して唯一のなぐさめにしています。
独身と言っても秋子にも過去はあったようです。
「亭主に先立たれた40女が一人で生きていくには、中居か家政婦になるしかない」‥時代もあるでしょうが、こういった本文が出てきます。
秋子は「どんな家にも不幸はある」という自分の哲学を作って、その発見に仕事のやりがいを見いだしているのです。
いい趣味ではない。しかし、でも、やはり
原作を読んでいると、どうも秋子の味方になる、応援してしまうんです。
その派遣先の主婦が、いけ好かないというのもあります。雇用ぬしと労働者の厳然とした事実を横からひっくり返したい。その欲望、願望の代表者が秋子です。この家政婦のやり過ぎなところが、スリリングでワクワクするのです。
ということで清張ビギナーにオススメです!
秋子に共感し、彼女の活躍に、スラスラ ページがすすむことでしょう。
ページをめくるのに苦労は入りません。(笑)
派遣先は大学教授の家。金持ちってほどではないけど、どこか取り澄ましている。就任したその日の晩に、夫婦の会話に自分の悪口が出てきたので、秋子は普段にも増して口惜しがります。
どうやって化けの皮を剥がそうか、
秋子はアンテナを張ります。
この取り澄ました大学教授の家の弱点を知りたい、と躍起になるのです。
最後は秋子の思いどおりになります。
教授の家でひとり店屋物を頼んで、ご機嫌になります。
少し、油断したのかもしれません。
清張らしい因果応報がこのあと用意されています。
テレビでもそうですが、この家政婦、調子に乗り過ぎて最後はドジを踏むのです。
これが、このシリーズのお約束になっています。
おそらく原作の「熱い空気」の結末をそのまま踏襲することにしたのでしょう。