3月3日。


川田茂雄さんと言う方が居ます。


国内の大手カメラメーカーで生産技術課、品質管理課、

消費者相談室、各SC所長を歴任しクレーム対応の最前線で

活躍されました。


2002年に退職後は、クレーム処理関係の執筆活動を開始するとともに

「クレーム処理研究会」を主催されています。


著書に

「社長を出せ!ってまたきたか」

「社長を出せ!実録クレームとの死闘」等があります。


このクレーム界のご意見番である川田氏の

「社長をだせ!最後の戦い」の中に

「日本一・いや世界一のクレーマー」と言われる


水戸誠さんと言う方が出てきます。

数多くのクレーマーを見て来た川田氏は、

クレーマー達を幾つかのタイプに分類しました。


水戸誠さんは、この幾つかのタイプに当てはめたら

「世直し爺さん型」クレーマーであったそうです。


「世直し爺さん型クレーマー 水戸誠氏」は、

・もの、カネでは絶対に動かされない

・法律を決して犯さない

・問題の本質を徹底的に研究する

・攻め道具は、類まれな優秀な頭脳・・・こんな人であったそうです。


幾つかのエピソードが著書の中で紹介されていますが

その中でも水戸氏の人間性を顕す印象的な話を

ご紹介致します。


世界的に有名な日本の某家電メーカーが

1960年代初め、「当社のトランジスタは、性能が良くなった為

永久保証致します」と言って売りに繋げたそうです。


当時は、トランジスタラジオ・白黒TVの全盛時代です。

まだまだ家電製品の品質が不安定な時代でありましたから

この家電メーカーの広告は、注目を集めました。


ところがこの家電メーカーは、

ユーザーがラジオが故障して修理に出すと、

「トランジスタ交換」で修理代を取っていました。


水戸氏は、ここにクレームをつけたそうです。

家電メーカーが永久保証の宣伝をしてから20年後の事でした。


このクレームを受けてメーカーも8ヶ月粘りましたが、

ついに「永久保証と言っておきながら修理代を取ったのは、間違いでした」

と認めたそうです。


すると水戸氏のさらなる追及の矢が飛んできます。


「それは、私だけに認めるのではなく当然全国のユーザーにも

きちっと知らせましょうよ」早い話がこの事を新聞に出しなさいと・・

こう言う事になったそうです。


この事についても、なんだかんだとやり合いましたが

結局翌年の5月1日付けの全国紙に全三段と言う大きな

「お侘びとお知らせ」広告を載せたそうです。


今では、新聞に毎日の様に企業の同類の広告が見られますが

当時メーカーが自社の過失を認めることは、稀であったそうです。


↑ココまでだけでも、このメーカーの潔さ、水戸氏の鋭さに驚きます。


しかし水戸氏の追及は、まだまだ続き・・・

「それでは、永久保証と言っておきながらいったい幾らお客さんから

騙し(物騒ですね)取ったのか」と話は、展開します。


20数年間の個々の修理代金の総額なんか把握し様は無いので

メーカーとしては、「概算で2億6千万程でしょうか」と回答。


すると水戸氏は、

「それは、20年前の貨幣価値での計算だから今日(コンニチ)では、幾らか?」

と詰めたそうです。


メーカーが最終的に算出した金額は、10億円であったそうです。


水戸氏に言わせれば「トランジスタは、永久保証と言っておきながら

お客様から修理代を騙し取った。その額は、10億円」と

こうなってしまうのだそうです。


「そんならその10億円をお客様にお返ししなさい」

と言われても、今更20年前の数千円ずつの返金を全世帯に出来るはずも無く


その旨水戸氏にお話すると

「では、社会に還元しなさい」と言う事になり、結局この家電メーカーは

1年間1億円ずつを、全国の社会福祉施設や文化、芸術団体に寄付

したそうです。


一切匿名で、寄付先の選択権も無く・・・


裁判に負けて、渋々・・・と言う訳でなく、

当時の会長の判断で水戸氏の申し入れを

受けて立ったこの家電メーカーは、約束の10年を過ぎてからも

寄付を続け、今でも一流の家電メーカーとして存在しているそうです。


町の自動車修理工場の親父さんである水戸氏の元には、

この家電メーカーだけでなく、保険会社、大手乳業、郵便局、銀行等から

様々な人が訪れ、先端的なサービスのアイデアやアドバイスを

得たと言います。


いつも

「お客様の立場で」

「もっと良くなろう」と言う事を考え続けなさいと言う事が

水戸氏の本当に言いたかった事なのかも知れません。