見た日 : 2024.1.26.
見た場所 : ライブ配信(アーカイブ配信は~2/4)
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お年玉〈年始ご挨拶〉:坂東 巳之助

 巳之助を初め7人が今年でこの新春浅草歌舞伎から卒業するそうだ。記念に客席を含めて自撮りをしていた。そこから上手にスマホの電源を切るように導いていた。





「本朝廿四孝(ほんちょうにじゅうしこう)」 十種香(じゅしゅこう)

<上演以前のストーリー>
 室町幕府は将軍・足利義晴の時代。甲斐の武田信玄の家宝「諏訪法性(すわほっしょう)の御兜(おんかぶと)」を越後の長尾謙信が返さないため、両家は対立している。将軍が和睦させるために双方の子供を許婚にさせる。将軍が暗殺された時、両家は三回忌までに犯人が挙げられなかったら己の子息のクビを差し出すと約束するが結局犯人は見つからず、信玄の息子、盲目の勝頼が切腹する。実はこの勝頼は赤ん坊の頃にすり替えられた家老の子供だった。本物の勝頼と瓜二つだ。庶民の簑作(みのさく)として育った本物の勝頼は、家宝を奪い返すために、亡くなった盲目の勝頼の恋人だった武田家の腰元、濡衣(ぬれぎぬ)と共に正体を隠し簑作として長尾家に召し抱えられる。
<今回はここから舞台が始まる>
 長尾家では八重垣姫が切腹した許婚、盲目の勝頼を思って姿絵を前に悲嘆に暮れ、供養のために10種類の香を合わせて焚いている。別室では濡衣も恋人だった盲目の勝頼の位牌を前に祈りを捧げる。
 そこに本物の勝頼が登場する。
 絵姿にそっくりな勝頼を見た姫は濡衣に間を取り持ってほしいと頼む。濡衣は勝頼ではないと一旦は否定するが、武田の家宝を持ち出すならという交換条件を出す。死のうとまでする必死な姫を見て、ついに目の前にいるのが本物の勝頼であると明かされる。そこに姫の父、長尾謙信が来て簑作(勝頼)を塩尻に使いに出す。
 謙信は仕官してきた男の正体が本物の勝頼と見破っており、討手として白須賀六郎と原小文治を送り出す。
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 まだ話は続くがこの日はここまで。
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 歌舞伎の舞台では長い話から抽出して上演することはままある。元々どんな出来事があったか分からないとついていけない。ネットであらすじを確認して見た。





「与話情浮名横櫛(よわなさけうきなのよこぐし)」 源氏店(げんじだな)

<上演以前のストーリー>
 江戸の小間物屋・伊豆屋の養子、与三郎は千葉・木更津の親類に預けられていた。地元の親分、赤間源左衛門の妾、お富とすれ違って互いに一目惚れをする。しかし2人の関係がバレて与三郎は源左衛門から全身に34ヶ所もの切り傷をつけられる。逃げ出したお富は海に身を投げるも、通りかかった和泉屋の大番頭、多左衛門の船に救われる。
<今回はここから舞台が始まる>
 あれから3年。お富は源氏店で多左衛門に囲われている。
 ならず者になった“切られ与三郎”は相棒の“蝙蝠安”(こうもりやす)こと蝙蝠の安五郎と組んでゆすりたかりをしている。今日も、前に安がいくらかせしめたお富の家に与三郎を連れてくる。お富はさんざん渋ったが、居座る安に閉口し一分の金をやる。安はその額で満足して帰ろうとする。
 黙って聞いていた与三郎が百両でも帰らないと言い出す。この家の囲われ者がお富であると気がついたのだ。有名なセリフ「しがねえ恋の情けが仇…」と恨み言を述べる与三郎に、お富もいきさつを語り、救ってくれた多左衛門に囲われてはいても男女の仲ではないし与三郎を忘れたことはないと言う。
 多左衛門が帰ってくる。お富はとっさに与三郎を兄だと言ってその場を取り繕うが、事情を察した多左衛門は与三郎に正業に就く資金を与え、出直すように諭す。
 与三郎が出ていくと、多左衛門はお富に守り袋を渡して出かける。中を見ると、囲っているお富に手を出さなかったのも道理、多左衛門はお富の実の兄だった。お富と与三郎は再会を喜ぶ。
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 この話にもまだ続きがある。
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 源氏店は上演する際に実名を避けて使われた地名らしい。例の有名なセリフからすると鎌倉なの? 実際は玄冶店(げんやだな)で、東京都中央区日本橋人形町三丁目のあたりだと歌舞伎公式総合サイトで紹介している。昔はやった歌は「げんやだな」と歌っていたな。
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 与三郎役の中村隼人は、(孝夫…とつい言ってしまうのだが)片岡仁左衛門のような面立ちでクールな二枚目に見えた。





「神楽諷雲井曲毬」(かぐらうたくもいのきょくまり) どんつく

 小学館の日本大百科全書(ニッポニカ)に
「初春を祝福する雑芸(ぞうげい)太神楽(だいかぐら)の風俗を描いた作」
「「どんつく」とよばれる田舎者の下男が主役で、親方、笛吹きの男のほか、年礼の旦那、芸者、白酒売りなど、いろいろな人物が登場する。親方の籠毬(かごまり)の振(ふり)から、芸者と旦那の振、そこへどんつくがおかめの面をかぶって割り込み、鈴の踊り、親方との黒赤尽くしの踊りなどがあって、総踊りで終わる。」
とある。
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 せっかく辞典を引いたのに「年礼」が分からなかった。これをまた国語辞典で調べたら「新年の挨拶に訪問すること。年始の祝賀の礼。年始。賀礼。」(日本国語大辞典)とのこと。ン十年生きていても知らない言葉ばかりだな。
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 ストーリーがどうのと言うより役者が順に前に出て楽しませてくれる出し物て感じ。
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 もう1つ己の無知を披露しよう。 (^_^;) 「振り」は「日本舞踊の用語。」で「振りは物まね的しぐさの,演劇的要素の強い部分を指している。」(世界大百科事典)だそうだ。
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 曲芸の籠鞠は百科事典には「振り、モノマネ的、演劇的要素が強い」とあるのに、ちゃんと芸をしていた。ずいぶん練習したことだろう。技を失敗しても皆が声をかけるし、成功すればやんやの大喝采。大いに盛り上がっていた。
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 総踊り(全員出てきて踊ること)は一瞬ラインダンスのよう。見よう見まねの様子を見せて始まり、しっかりまとまる。
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 賑やかで楽しかった。