シン・流れゆく日――酔眼 テキトー日記〈3〉

 

 △月〇日

 2月8日に投開票された衆議院総選挙の結果について考えた。

 選挙結果は自民党の圧倒的な勝利だった。自民党は単独で2/3を上回る316

議席を得た。これにより日本は危険な道に進む可能性がより高くなった。

 

 一つは、自民党が2/3を上回る議席を得たことで法案が衆議院で再議決ができる――法案が参議院で否決されても衆議院に戻され再議決される――ことになり、

自民党の悪政がこれからもまかり通るからだ。

 

 そして、もう一つは憲法改正の発議が可能になったことである。かりに憲法改正が発議された場合、9条改憲が行われ、これまで憲法前文や「憲法9条」によって支えられた恒久平和主義――戦争放棄、戦力不保持、交戦権否認――が打ち捨てられて、

 

 日本は「平和国家」から「戦争国家」「日本は戦争をしてもよい国」に変質することになる。そうなれば自衛隊は軍隊になり、やがて徴兵制が敷かれ、「自分の国は自分

たちで守ろう」というかけ声の下で、日本は公然と「戦争する国」になっていくことだろう。

 高市早苗首相は、選挙期間中に、憲法に自衛隊を明記するということを公言して

いたし、総選挙の開票を受けた2月9日の記者会見では、

 

 「国の理想の姿を物語るのは憲法」だとし、その「憲法改正にむけた挑戦も進めていく」。そして「各会派の協力も得ながら改正案を発議し、少しでも早く憲法改正の賛否を問う国民の投票が行われる環境をつくっていけるように、粘り強く取り組んでいく覚悟だ」と語っている。

 

 なお、「憲法改正」賛成という議員が今回の総選挙で当選した議員の中で9割超を

占めているというなか、2月15日のNHK日曜討論で、自民党の幹事長代理は

「国論を二分する問題」として改憲をあげて「しっかりすすめていきたい」と発言。

 

 続いて、国民民主党の幹事長は、「憲法改正」について、「参議院は与党が過半数ないので、2年半後の参議院選挙が大きな山になる」と発言し、また、緊急事態条項や9条改正を「与党内で考え方をまとめてほしい」と改憲推進の姿勢を示した。

 

 また自民党と連立を組んでいる維新の幹事長も、「この時期に(改憲を)すすめて

いくことが大事だと」と改憲論議を煽りたてている。

 

 さらに中道改革連合の代表までもが憲法に関し「どの条項をどのように改正して

もらいたいのか議論してもらわないといけない」と与党の自民党に迎合する発言を

していた。

 

 なので、このように政治が右傾化しているいま、今後、高市総理が率いる自民党

連立政権が日本のかじ取りをしていくかぎり、そうした自民党を応援・補完する勢力とともに日本が危険な道に進むことはまちがいないことである。

 

 しかしながら、ここでよく考えてみよう。

 

 選挙結果は、このように日本の進路を危うくする状況を確かにつくりだしたが、

しかし有権者の多くは、高市自民党政権にフリーハンドを与えたのだろうか? 

 

 高市総理が進めようとしている改憲に信任を与えたろうか?

 

  憲法を改正して「憲法9条」を有名無実にし、日本を「戦争国家」にしてもよい、自衛隊は海外へ行って人を殺してもよい、

 

 あるいは日本のために殺されてもしかたない、あるいは敵の基地をミサイルで攻撃し、逆に日本にミサイルを撃ち込まれて国民が戦争にまきこまれ血をながしても

「戦争だからやむをえない」、

 

 ―——ということを高市総理に「白紙委任」したのだろうか? 

 

 さらに言えば、戦争のために若者が徴兵され血を流すことがあたりまえになって

いく日本になってもいい、ということを高市総理に一任したとでもいうのだろうか? 

 

 なかには、そうしたことを想像もせずに、「高市さんなら何かやってくれそうだ」と支持した人はいたかもしれないが、多くの日本人は日本が戦争する国になってもいいなどとは思っていないはずだ。

 

 そもそも、今度の選挙は、「高市早苗が内閣総理大臣で良いのかどうか」と言って

始まった選挙であった。開会された国会を所信表明も予算審議もせずに冒頭で衆院を解散。解散から投開票まで最短の16日間しかなく有権者に各党の政策などを考える時間すら与えない、また大雪が降った地域では投票所に行くのが困難をきわめたと

いう異常ともいうべき選挙だった。

 

 「有権者に十分な情報と熟議の時間を与えてから意見を聞くのでなければ、まっとうな民主主義とは言えない」と指摘する政治学者もいるがその通りだろう。

 

 また、先に記した選挙翌日の2月9日の記者会見で高市総理は、「国論を二分する

政策」を巡り、「国民のみなさまから信任をいただいた」と述べていたが、

 

 しかし高市総理は選挙戦で、「国論を二分する政策」を有権者に、具体的な内容を

きっちりと訴えていただろうか? たとえば、「国論を二分する」、「憲法改正」を街頭で訴えていただろうか?

 

 いちども訴えていないはずだ。

 

 にもかかわらず、選挙で大勝した後で、国民の信任を受けたと言って、「憲法改正」をする考えを有権者に示すのは、「後出しじゃんけん」と同じではないか? 

 

 有権者が自分(高市総理)を内閣総理大臣は「高市早苗で良い」と「信任」したので、それが確認できたから、後で「憲法改正」という「勝ち手」を出す、という

 卑怯な手である。 

 

 子どものゲームではありえても、国家の形を「戦争国家」へと作り替えるやり方としては、いかがなものだろう。

 

 つまり、高市総理は選挙戦での論争を避け、逃げていたと思う。

 

 投票日1週間前の2月1日のNHK「日曜討論」生放送番組に各党の党首が

そろって出演していたなか、高市総理は、手の怪我を理由に出演を土壇場になって

キャンセルしていた。

 

 それも、他党から批判されていたように党首討論から逃げたと思われても仕方が

ない。しかしそうしたもとで、ともかく自民党は2/3を超える316もの議席を

得た。

 では、勝てば官軍――戦いや争いにおいて、道理や正義に関係なく、勝ったほうがすべて正しい(官軍)とされ、負けたほうが不義(賊軍)とされる――なのか?

 

 いやいや、けしてそうではないだろう。

 

 なぜなら、自民党の比例得票は、投票した有権者の36・2%だった。

しかし、にもかかわらず、2/3超の議席を占めている。

 

 どういうことか?

 

 原因は選挙制度が小選挙区制によるからだ。小選挙区では、1人しか当選せず、

議席に結びつかない多数の「死票」が生れる。

 

 それゆえ、かりに完全な比例代表制であれば、今回、自民党の議席は、170議席だという計算もある。なので、約37%の得票で86%の過剰な議席を得ることが

できたのは、「虚構の多数」であると指摘されてもしかたがない。

 

 しかし、そんなことを言っても、現行は「小選挙区制」と「比例代表制」併用と

いう「ルール」なのだから「仕方ない」と言われれば、それまでかもしれない。

 

 しかしながら、かりにそうだとしても、今回の選挙で多数を取った自民党が、

今後、強権的な政治を強行し、目指そうとする「戦争国家」づくりに突き進むなら、

 

 現在の平和憲法のもとで、平和と民主主義と人権の精神を培ってきた、多くの人々からの「戦争は絶対にイヤだ」という怒りと反感をかい、

 

 わたし自身を含めた多くの国民、有権者との矛盾と対立が激しくなるのは必至だろう。

 「新しい戦前」が始まったと言われて久しいこの日本。その行きつく先はもちろん

戦争である。しかし、決して二度と戦争をしてはいけない。

 △月〇日

 新聞報道によれば、中国の王毅(おう・き)外相は2月14日、ドイツで開催中のミュンヘン安全保障会議で行なった演説後の質疑応答で、日本について「台湾に対する侵略と植民地の野心と、軍国主義の亡霊はまだ消えていない」と批判したという。

 

 中国外務省によると、王氏は高市早苗首相の「台湾有事」が存立危機事態に当たるとの国会答弁を改めて批判した上で、欧州におけるドイツの戦後の取り組みを引き合いに出し、「しかし、日本ではいまだに、A級戦犯をまつる(靖国)神社に政治家が次々と参拝し、『英雄』とたたえている」と指摘。「これが、一切の問題の根源だ」と述べたとのことである。

 △月〇日

 特別国会が開会した。

 衆参両院本会議で首相指名選挙がおこなわれ高市早苗首相(自民党総裁)を選出

した。衆院では圧倒的多数で選出されたが、参院では過半数に1票足りずに、

中道改革連合の代表と決選投票を行った末に選出された。

 

 特別国会は7月17日までの150日間だというが、高市政権が数の力を振りかざして、極右タカ派路線、歳出拡大路線、「戦争国家」づくりにひた走ろうとするなか、

そうした自民党政治に明確な対抗軸をリベラル勢力がいかに示していけるのか。

 注視していきたい。

           2026年2月19日(木)

     雨水   土脈潤い起こる(どみゃくうるおいおこる)

         早春の暖かな雨が降り注ぎ、大地がうるおいめざめるころ