後ろを向く市松人形

亡き祖母がくれた人形でした。私のお雛祭りのお祝いに、ひな人形と一緒に買ってもらった市松人形でした。

綺麗な赤い着物を着ていて、ぱっちりとした目をしていました。

幼児のころはあまり怖いと感じた記憶がないのですが、

もの心着いた頃には、市松人形が怖くなっていました。

多分、怖い話が好きで、読んだりしていたので影響を受けたのでしょう。

昔は、ワイドショーで あなたの知らない世界を見たり、漫画で 恐怖新聞とか読んでいましたので (笑)

それからも、ずっと怖かったのですが、自分の人形だし、頂き物だし、処分する選択肢はなかったのです。

恐いながらも、2月から3月の1か月間だけだし、気にせず過ごしておりました。

 

事件が起こったので、今から20年ぐらい前で、

二人目の子供の出産で実家に帰っていたころだと思います。

 

そのころは、床の間に常に市松人形が飾られていて、

ガラスケースに入って立っていました。

帯の後ろに、添え木が入っています。

 

その人形が、なぜだか毎日少しずつ横を向いていきます。

少しずつ回転しているのです。

10日ほどで、背中を向けてしまいました。

背中の帯の飾り結びが見えた頃、我慢が出来なくなり

母に泣きつき、前向きに戻してもらいました。

後ろを向いてどんな顔をしているのか

想像するだけで怖くなってしまうのです。

前を向かされた人形は、いつもの顔で、じーとこっちを見ていました。

母は、『人形だって、後むきたい事もあるわよ』と、ぼそっと言っていました。

 

それからも、場所を変えながら、数年間は飾られていました。

その後も、その時の怖さは消えず、実家で泊まるときは、びくびくしていました・・・

 

いつからか分からないのですが、実家に帰っても人形を見かけなくなりました。

私が怖がるので、母か片づけて、くたれたのだと・・・

白い布にくるまれて、押し入れに入っているのだと思っていました。

東京の、家でも、人形が追いかけてくる夢を見ていたので、何だかほっとしました。

 

それから、10年ぐらいたった今、勇気を出して『あの人形はどうしたの?』ときいてみました。

母は、あっさりと 『お金添えて、お寺にもっていった。』と言っていました。

もっと早く教えてくれたらよかったのに。10年間怯えてしたのは、無駄だったのかしら・・・

 

結局、恐怖は、自分の頭の中にあるもので、物は連想する媒介になっているだけなのだなぁ、と実感しました。

何年も怖がっていた人形は、もう供養されており

無駄な恐怖と戦っていた自分が少し、滑稽に思えます。

 

人形に何かが潜んでいたのか、そうでないかは・・・今となってはわかりませんが。

ホラー、スリラー、都市伝説、怪談、心霊体験談など

興味はつきないけれど、ほどほどにしないとね。