今日より、4日も続けてスケジュールが空く。
 台湾旅行に味を占めて、どこにでも行きたい、
 とにかく遊びたい気分なのだが、
 突然、誘っても、皆さん
 スケジュールが合わせられない。
 あたりまえだ。
 せっかくの休みを苦行に費やしてどうする?と思っていたが、
 この休みに俺記念日の5月15日を挟むことを確認したら、
 やっぱり初心に帰ろう。
 楽しいことを楽しむでなく、つらいことを楽しみたい。
 しかも、テレビの収録があれば、食事シーンのロケも考えられる。
 ならば、テレビスケジュールのない時なら、出来るではないか。
 そこで断食突入。

 起床時より、何も口にしないことを決める。
 唯一、飲めるものは、
 ファスティング・ジュースのみ。



 60種の野草・薬草を発酵させた作った、
 濃縮した青汁みたいなものだが、
 甘味があり、オーちゃんが
 不味い、不味いと言っていたほどではない。
 むしろ、青汁より美味い。
 これを3日間、水で割って飲む。

 ビデオで、映画『アンチェイン』。
 (5/19~テアトル新宿でロードショー公開)
 毎週、『お台場トレンド市場』で推薦しておきながら、
 半分くらい観て、途中止めにしていた。


 アンチェイン

 四角いリングに青春を賭けた男たちのドラマチック人生。
 第2の人生を踏み出す男たちへの応援歌。by K. Hattori
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 人間は生まれながらに平等で、
 努力さえすればそれなりの成果が出せるなんて大嘘だ。
 それはプロスポーツの世界が証明している。
 この映画に登場する数人のボクサーたちは、
 10代の頃からボクシングを始め、
 切磋琢磨しながらプロのリングに上がった。
 プロボクサーを目指す若者は多い。
 中には実際にプロになる者もいる。
 だがプロのリングで勝ち残っていくのは、
 ほんの一握りの選手だけなのだ。
 残りの選手はほんの数年で数試合を戦い、
 能力と体力の限界に達してリングを降りていく。

 ボクサーの強さは、才能と努力と運のかけ算だ。
 持って生まれた才能がまったく互角なら、努力した方が強くなる。
 でもどんなに努力しても、埋めきれない才能の違いがある。
 才能と努力があっても、運のなさに泣く者も多い。

 『ポルノスター』の豊田利晃監督が、
 4人の若いボクサーたちの夢と友情と挫折と第2の人生を描く
 ドキュメンタリー映画。
 タイトルの『アンチェイン』は、アンチェイン梶という
 ボクサーの名前からとられている。
 '69年生まれ。19歳でプロボクサーとしてリングに上り、
 7戦目に眼球の滑車神経麻痺で引退。
 プロとしての戦績は6敗1分け。
 ついに1度も勝てないボクサー生活だった。

 映画には彼の友人だった3人のボクサーが登場する。
 3人とも'70年生まれ。
 だが、プロボクサーの永石磨は27歳で引退。
 シュートボクサーの西林誠一郎は28歳で活動中止。
 映画製作段階で現役最後のひとりだったキックボクサーの
 ガルーダ・テツも、この12月9日に宿敵・小野瀬邦英との
 5度目の戦いを最後に引退する。
 誰しもが最初は世界チャンピオンを夢見てリングに上る。
 だがその夢を実現した者は誰もいない。

 人生でもっとも多感で光り輝いている
 10代後半から20代前半にかけての青春期を、
 四角いリングの上での殴り合いに費やした男たち。
 世の中の同世代の男たちが
 気ままな学生時代を謳歌しているときにジムで汗を流し、
 学校を出た同世代の男たちが
 何となく人生の終わりまで見たつもりになっている頃に、
 才能と能力の限界を我が身で感じてリングを去る人生。
 格闘技の世界は何でもそうなのだろうが、
 なんとも壮絶なものだとつくづく思う。

 映画はアンチェイン梶の破れかぶれ人生
 (引退後に精神を病んで入院するが現在は退院して社会復帰)
 を中心に、栄光を夢見た若者たちの輝きと挫折を描いていく。
 負け続け人生の中で、名もなく消えていく青春時代への鎮魂歌。
 あるいは決別の歌だろうか。

 現役生活を続けているガルーダ・テツ(今日で引退)には
 失礼な話だが、彼もまたこの映画の中では
 「負け続け人生」のひとりとして描かれている。
 だがここには、「負け組の美学」のようなものが感じられて
 むしろ清々しいのだ。
 
 「やれるだけのことはすべてやった。これ以上はもう絶対に無理だ」
 と言い切れる人が、世の中にどれだけいるだろうか。
 ほとんどの人間は「俺だってやる気になれば」とか
 「運さえ良ければ」と自分をごまかしながら生きている。
 でもこの映画に登場する人たちには、そんな欺瞞がない。
 (
映画瓦版より

 俗にあるボクシング映画のように、カタルシスを設定していない。
 むしろ劇的に描かないことで、映画を凡庸にさせない、
 タイトロープに物語を成立させている。
 結果として前向きなのか、後ろ向きなのかわからない、
 アンチェイン梶の無軌道な行動に、なんとも不思議な気分と
 興味で付きあわさせる。
 何度もこの日記で書くことだが、
 リングに上がる人は、勇者であり選ばれた人である。
 でも、誰しもがわかることになる真理だが、
 人生はリングそのものである。
 「人生がリングである」ことは、リングに上がる前から知っていた。
 でも、俺は23歳のときに、
 たけしのジムに入ることで、初めてリングに上がることを意識した。
 芸人の世界は、リングの比喩は、より身近だ。
 才能と努力と運のかけ算に方程式が無さ過ぎる。


 格闘技ファンである俺は眩しくリングを見上げている。
 俺は、リングにいる人が他人事でなく見える。
 そして常に自分の人生のリングを水平に見る~ことを意識している。
 
 だからこそ、こういう映画の切なさは身につまされ、
 たまらないものがある。

 「ボクシングには、
  こういう映画のようなストーリーは山のようにある」
 とは、最近、後楽園ホール通い詰の赤江くん(玉袋)の評。
 確かにそうだろう。

 ボクサーのようにハングリーになったところで、
 気分転換に高円寺買い物。
 MDウオークマン、購入。
 古本屋『球陽書房』で、主に図版の豪華な食ブックやムック、
 まとめ買い。
 これを眺めながら、断食しよう。
 さらに、もっとマゾヒスティックに断食するように
 仕向けることはないか。

 世の中で最も断食などに縁遠い人。
 ターザン山本さんに電話。
 「セロ円生活で暇にしている」とのこと。
 急遽、新宿に呼び出す。

 新宿高島屋アイマックスシアターへ。
 昔、映写技師だった、ターザンさんは、映画作品より、
 映画館での映画体験を愛しているようなところがある。
 一度、(この、手あかのついた言葉ながら)
 “都会のオアシス”のような劇場を
 (死ぬ前に)見せてあげたかった。
 「ファスティングを始めた」と言うと、
 「それは最悪ですよオオ。
  我慢することほど、体に悪いことはないですよオオオ」
 と予想通りのターザン節。
 俺はその台詞を聞きたいわけだ。



 ポップコーンとカルピスを、
 恋人気分でターザンに買ってあげて入場。
 巨大スクリーンを見た途端に、
 「オオオ!」と子供のような反応、
 これを見たかった。
 
 16時40分より『アマゾン』。
 ターザンとアマゾンに入り込む。
 お客は10人ほどだが、
 そのなかで、俺は54歳のおっさんと二人きり。
 ターザンとて、ジェーンと一緒が良いだろうに。
 映像は素晴らし。
 記録フィルムのような内容であるが、
 40分の時間に不満は一切無し。
 猪木様を育んだ、ブラジルの大自然を堪能して、終了する。

 そのまま、2本目へ。
 『ブルーオアシス IN TO THE DEEP』
 カリフォルニアの世界で最も美しいと言われる、
 海底の森“ケルプの森”の生体を描いている、ドキュメンタリー。
 こちらは、3D試用になっている。
 3Dセットを着用したターザン、
 容貌魁偉で、まるで桜庭マシーンか、
 あるいは将軍KYワカマツのようだ。
 こういう格好をさせたら、
 この人のビジュアルの決まり方ったらない。
 見てみぃ、この顔…↓(徐々に浮かび上がる謎の物体)
          ↓

          ↓



 しかし、ターザンがポロポロ落としながら、
 パクパクと食べるポップコーンの匂いが腹に沁みる。

 映画終了後、移動の車中、『ハンニバル』の話。
 ターザンの今、一番のお気に入り映画。
 劇場で3回も見たと言う。
 「そして、レクター博士こそ俺のライバルだ!」と、
 また気狂いなことを、HP上で言い出している。
 「でも、一作目の方がいいって人が多いですよね」
 と俺が言うと、
 「そこが、シロートなんですよオオオ!プロから言わせると、
  これは2作目の方が、断然、良いんですよオオオオ!」
 不審に思って聞いてみた。
 「でも、ターザンさん、『羊たちの沈黙』は見たんですか?」
 「見てない!(キッパリ)
  見てないけど、俺くらいになると、人から聞くだけで、
  どういう映画で、どういうシーンがあって、
  アンソニー・ホプキンスが、どういう役をやってるか、
  わかるんだよオオオオ!
 「本当にわかるんですか?
  
レクター博士がライバルで、
  レクター博士になりたいって言ってましたけど、
  ターザンさんは、もう2年前にレクターになってますよ」
 「???」
 「俺たちのライブの『浅草お兄さん会』にターザンさんが登場するとき、
  いつも囚人服と猿ぐつわで連行されてたでしょ。
  あれってDr.レクターの衣装と、
  『羊たちの沈黙』のサウンドトラックで登場したたんですよ」



 「ほんとうォォ? 知らなかったよオオオ。それは嬉しいなアアア!
  だったら、俺はもうすでに、レクターになってるんですよオオオ!
  俺の後を、アンソニー・ホプキンスが追っかけてるんですよオオオ」

 阿佐ヶ谷「福来飯店」へ。
 「浅ヤン」でご一緒した、料理人、ヤンさんのお店。
 ここに、シュート活字の提唱者で、
 シカゴから日本に帰ってきた、
 さすらいのフリーター、田中正志さんを招待した。

 二人は、共にキャリアをスタートしたのが、
 大阪の『週刊ファイト』紙 。
 しかも、二人とも俺のプロレス観の先生でもある。

 ま、二人とも、自惚れ、自己愛の個性が強すぎるが故に、
 互いを基地外呼ばわりしながら、決して認めず、
 今まで反目しているようだったが…。

 とにかく、たっぷり広東料理を食べて、大いに飲んでいただいて、
 二人の丁々発止のやりとりを見ながら、
 一人ファスティング・ジュースを飲むって~つもりだったのだが…。

 話は思ったほどは、弾まず。
 と言うより、肝心の仲介役、聞き役の俺が、
 からっきし駄目なのだ。
 食事やアルコール抜きの席が、
 これほどコミニケーションに困るとは思わなかった。
 酒席で食っていなかったら、
 こんなに話の食いつきも悪いものなのか。
 人の話を聞いている余裕すらなくなる。

 俺の思いつきだけで、やっていることだけに
 途中からなんだか、二人に悪いことをしたと思った。
 

.

 逆に、オーナーで料理人のヤンさんが、
 台北の出身と言うことで、
 先日の台湾話をついつい二人で話込んでしまう。
 田中さん、ターザンさんは置いてきぼりだ。

 料理が食べきれず、ターザンさんの付き人の歌枕くん、
 スズキ(同居人)も合流。
 
 蘭花牛肉(牛肉ブロッコリー和え)
 三垪菜(クラゲ・焼豚・白油鶏)
 白汁蝦巻(えびマヨネーズ和え)
 付錦鍋巴(五目あんかけおこげ)
 酢豚、エビチリ、焼き餃子、
 最後に特別に出してくれた、
 清蒸魚(金目鯛の広東風蒸し)が、あまりに美味そうで、
 スープだけを、スプーンに3~4杯だけ、舐める。



 酔いが廻ってきて、ターザンと田中さん一緒に本を出そうとの話に。
 「田中さんの得意なアメリカのプロレスの本だ」とターザン。
 「またアバウトな本ですね、
  田中さんの本は、結構、アカデミックですからね」と俺。
 「だから、俺が頭でっかちな田中さんの本を、
  読みやすくプロデュースするんですよオオオ」と。
 なんだか、褒めてるんだか、けなしてるんだか。

 そのまま、解散する。

 21時、『スネークピットジャパン』へ。
 空腹を考えないようにするためには体を動かすことだろう。
 断食のエキスパートである宮戸さん、
 (実際、以前から1日断食なら頻繁に、
  時には7日断食とかもやっている)
 俄然興味を持って、いろいろアドバイスされる。

 「メシやつまみ食わなければ、
  夜に、焼酎飲むくらいいいですよね?」
 すっかり、気持ちが萎えていた俺が言うと、
 「それじゃあ、断食の意味がないですよ!!!!
  断食は痩せる為にやるんじゃないんですよ!!!(怒)」と。
 確かにそうだ。
 山田教授もそう書いている。
 でも、もし、聞かなかったら、飲んでたな。
 俺の場合、寝酒の禁酒もツライかも。