桜庭和志、グレーシー打倒記念!!
 第27回、浅草お兄さん会、当日。

 97年8月26日から始めたお兄さん会もこれで最終回。
 メンバーも固定化しており、中身もレベルアップして、
 大入満員札止めが続くのだから
 この会をやめる理由はないだろう。
 
 どうして最終回なんですか?と聞かれる。

 

 真面目に答えると、

 お兄さん会を主催している
 我々、浅草キッドは芸能プロダクションである、
 オフィス北野所属である。
 それ故にこのライブは事務所が全面的に責任をもって
 主催している興業なのだ。
 で、我々とスピーク☆イージー以外のお兄さん会メンバーは、
 基本的には無所属である。
 事務所に入っていない。
 だから本来は、このライブはオフィス北野のスカウト網であり、
 あるいは一軍への道のりの多摩川グランドである
 との定義もあったのだが、
 お兄さん会芸人の事務所入り、
 あるいはTV的ブレーク、
 という喜ばしい事態には残念ながらならなかった。
 不況続きの世の中、大手プロでも、お笑い班が縮小されるようなこの節、
 芸人を引き受けることは、他人の一生を引き受けるようなものだ。
 それでも…という、決定的な決めてがなかった。

 この状況が、3年近く続いた。
 有望な何組かは、オフィス北野預かりで…
 というお話しもあったが、
 結局は、不調に終わった。
 無所属であるから会社に拘束権はないし、
 かと言って、芸人もお兄さん会を語って、
 大々的に展開するわけにもいかない。
 
 芸人はどっちつかずで宙ぶらりんのまま、
 その日暮らしが続いた。
 食い詰めたこともあり、
 何人かの芸人、
 東京ダイナマイトの卍が離脱することもあった。

 しかし、これはたいした悲劇ではない。
 芸人の世界でよくあるはなしではある。
 こんなところで、落ちこぼれる奴はどこでも落ちこぼれる。

 そして、東京ダイナマイトのハチミツ二郎が、この状態の打開策に、
 「トンパチ・プロ」と言う名の芸人集団、
 会社(ごっこ)組織を立ち上げた。
 彼らは、この組織で、今後、自主興行を打ちたい。
 個々に、バイトをしないでも、ちゃんと食えるようにしたい…と。

 ここに我々が絡めば、またも事務所がらみになる。
 
 そして我々は猪木さんが、
 自ら創設した新日本プロレスを去り、
 新たに新団体UFOを作ったように、
 『浅草お兄さん会UFO』を名乗り、
 新団体として、
 浅草キッド自体の、
 ライブ興業を立ち上げようということになったのだ。

 もちろん、この話は三者三様である。
 どこの馬の骨かわからぬ連中に
 今まで、小屋を押え、舞台を提供してくれた
 オフィス北野側に多大なる恩義もある。

 何度か交渉の窓口を持ち、
 いくつかの話を調整し、
 今後も相互の協力関係を確認して、
 今日に至った。

 仲間割れとか、観客動員減少などのマイナス要因は、
 何一つない、最終回である。

 13時からリハーサル。
 この会場にセリがあるのが、
 最終回にして初めてわかった。
 が、結果的にはこれは、今日、ここで使えるなら一番いい。

 15時に、我々だけ中抜けして電車を乗り継いで浜町スタジオへ。
 MXテレビ『Tokyo Boy』三本収録のなか、一本。

 シアターサンモール引き返し。

 楽屋にバクシーシ山下氏、

 お兄さん会ベルトも製作の
 マーくんが作ってくれた桜庭・マシーンマスク、
 本番ギリギリで間に合う。
 
 今回は写真で詳細に。


 オープニング、
 桜庭vsホイス戦ビデオ上映。

 後、桜庭のテーマ曲「スピード2」で
 浅草キッド、せりから、浮上。
 もちろん、桜庭マシーンマスクで。
 これは実に気持ちよかった。快感。



 続いて、「ラスト・オブ・モヒカン」で
 お兄さん会芸人クレージー・トレインで入場。
 にらみ合う二組。



 「おい、おまえら、どっちが博士でどっちが玉袋かわからないだろう?」
 「この中に、一人だけ、本物のハチミツ二郎がいます、さて誰でしょう?」
 と両者のマイク応酬。

   
 ここでお兄さん会を代表して二郎が
 「お兄さん会も、浅草キッドにも未練はない。 
 でも、今後、会長(猪木)だけは、我々にください!」と。
 「二郎、おまえ、東京ダイナマイトを解散してから、
  ネタやってないだろ!
  もし、今日、おまえがすっとこボーイズとして
  ネタをやって優勝したら、会長は置いていく!
  ただし、会長がどういうかはわからないぞ。
  今日も会長が来ています!!!!」

 そしていつものように「炎のファイター」で会長入場。
 しかし、会長の姿は謎の柔道着と、白マスク姿。



 マイクを持つと第一声は「最高ですか!」
 「会長、そこは『元気ですか!』ですよ」
 いつもと違うマスク姿、猪木節に、疑問符が…。
 「おいおい、
  おまえら、オレが本当に猪木だと思っているのか? 
  もしかしたら春一番かもしれないだろ、ムフフフ」
 「そんなわけないよ、春一番のハズないだろ??」
 すると会長がマスクに手をかけ、自ら脱ぎさると、 
 その顔は、やはり春一番。



 しかし、客席には春一番でも舞台の芸人には、
 バカ猪木マジックにかかっているので、
 本物の猪木さんにしか見えない。
 「ああ、本物だ!本物の猪木さんだ!!」
 その神々しい姿に畏怖する芸人。
 「よーし、わかった、お兄さん会は任せたぞ!!!」
 会長の言葉で最後の賞金マッチが始まる。

 この後、最後の賞金マッチの間に、オレはターザンの仕込みを手伝っていた。
 ちなみに、この日、マキタスポーツの「立川談志」は絶品だった。
 オレの心のベストテン、第一位。
 
 <賞金マッチ 投票結果>

 第1位 すっとこボーイズ 55票
 第2位 ニトログリセリン 46票
 第3位 殿方充      42票
 第4位 米粒写経     41票
     マキタスポーツ
 第6位 U字工事     17票
 第7位 鳥肌実      16票
 第8位 ロマンポルシェ   9票
 第9位 国井咲也      4票
 第10位 ファミコンズ    0票
     スピーク☆イージー

 ビデオコーナー。
 お兄さん会名場面ベスト3
 3位、ゲスト編。
 鈴木その子、小川直也、岸部四郎、そのまんま東、藤井モウなど。
 
 2位、 ターザン山本編。
 ここで、フィナーレに向けて、
 オレとターザンの因縁の「ファイトクラブ」。
 おむつ剥ぎマッチを見てもらった。
 
 1位、 粗チン対決編。
 東京ダイナマイトのはちみつ二郎とニトログリセリン三平が、
 「オレの方がより小さい!!」と
 自らのナニの大きさの見せびらかして闘った粗チン対決は、
 本物の、名勝負、名場面で忘れられない。

 つまり、お兄さん会とは、
 若手芸人のネタの発表会などでは、決してない。
 裸の男祭りであった。
 「男を張る」ってことは、「さらけ出すこと。」
 その確認の場であった。

 結果発表。
 見事にハチミツ二郎率いる、すっとこボーイズが優勝。
 猪木会長からも「ありがとう!」と激励される。
 「さ、最後の恒例全裸胴上げですが、いつもは、オレだけでしたが、
  今回は皆でターザンのおむつを剥がして胴上げしましょう」と提案。
 しかし、
 影マイクで、
 「バカ野郎、今までさんざんオレのおむつを剥がして恥をかかしてくれたな。
  今日は、絶対おまえらに、オレのおむつをはがさせないぞ!!!」
 と怒鳴りつけ「威風堂堂」のテーマでターザン入場。
 柔道着の下には白いオムツ一枚。

 だが、よく見ると、
 それはオムツではなく、下半身に白いオムツのペインティングだった。
 しかし、ポコチン部分は塗っていない。
 チンコ丸出しで、勝ち誇るターザン。



 「これで、おまえらは、オレのオムツを脱がせれないだろう。
 最後の最後に勝ったのはこのターザン山本だ!!!」
 「偉い!ターザンとんちが効いている!」と。
 お兄さん会芸人全員でターザンを胴上げだが、
 今回は胴上げメンバー全員がフルチン。
 ただし、U字工事だけは、服を着たまま。



 「汚れ芸人だらけのなか、
  この二人だけは、唯一のアイドルだったので、
  今まで裸にしませんでしたが、
  今日は最終回なので、こいつらも、裸にします!!」と宣言し、
 遠藤賢治の「東京ワッショイ」鳴り響く中、
 全員でパンツをむしりとり、胴上げ。

 

 その興奮の中、いつの間にか、
 オレとターザンさんが、本気で殴り合い。



 そして、オレがターザンのマウントをとると、
 胴着と帯びを掴んで、ターザンを「まんぐり返し」に。
 肛門まで丸出しのターザン、
 ホイスを超える、歴史的屈辱的敗北を喫する。



 最後は、ウルフルズ「バンザイ」が鳴り響く中、
 昭和プロレスの亡霊・ターザンを見せしめに、エンディング。



 舞台終了後、芸人の口から、ことごとく
 「面白かった…気持ちよかった…」と興奮さめやらず。
 そして我らがダーティー・マイナス・ヒーロー・ターザンに握手!!

 

 

 オレはターザンと同じシャワーに入って、
 入念に下半身を洗ってあげる。
 54歳の背中ではなく、ポコチンをソープ嬢のように、
 丁寧に洗ってあげるのは、マヌケだった。

 その後、ターザン、楽屋で息切れして倒れる。
 確かに、あの殴り合いは、本気で顔に入れてたので、
 ダメージも大きいだろう。
 昨日まで、
 「野垂れ死に」の本を徹夜で書いていたターザン。
 このまま、野垂れ死にしたら、オモロいのに…。
 打ち上げ。
 さらに打ち上げ。
 我が家には、スピジーや、鳥肌や、篤くんやら、
 珍しく赤江くん(玉袋)なども来て、ニギヤカだった。
 皆、話をしていたが、
 が、もう、何も覚えていない…

 薄れ逝く意識のなかで「ああ、面白かった…面白かった…」