義和団事件。

中国の北京で起きた、義和団による列強大使館への襲撃事件。

アメリカやイギリス、ロシアなどの列強の重鎮がそろうなか、約二カ月にもおよぶ籠城戦を指揮したのが、柴五郎という日本人の駐在武官だった。

 

この本を読むまで、義和団事件のことなんてちっとも頭に残っていなかった。

なんとなく、歴史の教科書で見たことがあるな…程度の認識しかなく、どこの時代の話かさえもちゃんとわかっていなかった。

(歴史は好きだけれど、明治に入った瞬間に極端に興味がない)

 

そんな私が、会社の人に勧められて読み始めた『黄砂の籠城』。

分厚い上下巻。

しかも中国で起きた事件になんてそんなに興味もないし…読むの時間がかかるかもなあ、なんて思っていたけれど。

なんと平日3日間で読破。

それくらいおもしろかった。

 

これは史実を基にしたエンタテインメント作品で、松岡氏らしいミステリ要素も含まれているので、とても読みやすい。

歴史が苦手でも、この作品ならば事件の概要や主要人物の名前は自然と頭に入ってくる。

もしこの作品が、私が学生の時代に書かれていたならば、この時期の歴史にも興味を持つようになっていたかもしれないな、なんて思う。

 

主人公として書かれている桜井伍長は架空の人物のようだけれど、この桜井の視点で、実在した柴五郎氏が客観的に描かれていることによって、さらに柴氏の傑物さがよくわかる。

(この桜井自身も五か国語を理解する、というスーパーマンなのだが…)

若干、日本礼賛が過ぎるかな、と思う部分がなくもないのだけれど、やはりこれだけの凄惨な状況を乗り越えられたのは、忍耐強い性質を持つ日本人が指揮をとっていたからなのかもしれない。

 

どんどんと包囲を狭めてくる義和団たちの息遣いが聞こえてくるようで、本のページをめくるたびに緊迫感が増してきて、

読みながら「早く終わればいいのに…」なんて思いながら、急いでページをめくった。

事件の終結を迎えたときは、私もようやくほっと息をつけた気分になった。

 

言葉を尽くしても分かり合えない人と出会ったとき。

相手を叩き潰すのか、距離をとり干渉しあわず共存をとるのか。

分かり合えなくても、相手を尊重することはできないのか。

 

そんなことも考えさせられる作品だった。