今日は奇しくも満月。

映画を見る前にもう一度読んでおこうかと思った


西 加奈子さん

『きいろいゾウ』

きいろいゾウ (小学館文庫)/小学館



田舎で暮らす若い夫婦、ムコとツマ。

ふたりの静かで、ささやかで、だけどどこかにぎやかで、ちょっとふしぎな日常。

だけどふたりの気づかない…気づかないふりをしている、影を落とすモノ。

平凡で、しあわせなはずなのに、いつももたげる不安や寂しさ。

ムコとツマが抱える秘密と、それをつなぐのは、きいろいゾウ。



この人の書く、独特なリズムの文章が好き。

ちょっとした、なかなか言葉にできな感情の動きとか、日々のこととか。

そういうのを言葉にするのが、とても上手な人だと思う。


ムコとツマ。

なんてつくりものみたいな(いや、実際つくりものだけど)名前とか、

個性豊かな登場人物たちに、ほわほわと温かくなる地方の言葉。

文章のむこうに見える、むせ返るような田舎での生活。

いちいちいちいち死んだ(生きてるのもいるけど)虫や生き物が出てくるのも、なんか面白い。

それにある種、キーワードの『満月』は、私がとてもすきなもの。

本当は、チシャ猫の口みたいな、月の船みたいな、細くて頼りない三日月がいちばんすきなんだけど。

蒼くて、銀色で、太陽みたいにギラギラしてない静かな温かさをくれる満月もすきなのです。


あたりまえの日常に、ふと不安になることの恐ろしさとか、

誰かと一緒にいるのに、それでも寂しくてたまらない気持ちとか。

言いたいことを言えないもどかしさとか、狂おしいほどの感情とか。


たぶんそういうのは誰しもが抱えていて、それはきっと日常としてあたりまえのことで。

けどそれが、突如どうしても耐え難いことに思える瞬間というのもあって。


人差し指の指先にできたささくれみたいな、ちくちくした痛みとか、

取り込んだばかりの洗い立てのシーツにしみこんだお日様の匂いを嗅いだときみたいな、ほわほわしたあったかさとか、

今日のお月様みたいにまんまるで、世界中を淡くやさしく包み込む光をみて、ほっと安心する瞬間とか。


ふだんは気にも留めないささやかなことを、改めて 「愛しいな」 って思わせてくれるお話。


わたしにとっての『きいろいゾウ』は?


それは、ヒミツ。

なのです。。。