いま話題のフランス映画
『最強のふたり』
久しぶりに、心に心地いい余韻を残してくれる映画でした。
パラグライダーの事故により、首より下が不随となってしまった大富豪フィリップと、
貧しいスラム街で育ち、前科持ちでもある黒人青年ドリス。
育ってきた環境も、嗜好も、性格も正反対である彼らが築いていく友情に軸に描かれた映画。
たぶん素材としては、ありきたりで使い古されたもの。
正反対のふたりがぶつかったりしながら、友情を築いていく~、みたいな。
でもこの映画はひと味違うのです。
怒涛の展開なんてものはなくて、静かに、そしてコミカルに、ふたりの日常が綴られているだけ。
だけど、それが心の奥深くに、静かに穏やかに浸透していく、何かがある。
ふたりは大きなケンカをすることもないし、大きな事件にまきこまれるわけでもない。
お互いに我が強くて、基本的にどっちもが言いたい放題。
それでもケンカにはならなくて、たぶんお互いがお互いの尊厳を認めている。
とくにドリスが本当に飾り気のない、ひとが忘れがちな根本的な優しさを持っているひと。
フィリップを必要以上に障害者扱いせずに、一般的な感覚で見れば無神経な言葉も平気で言っちゃう。
それはフィリップを障害者としてではなく、ひとりの男として、人間として向き合ってるからできることなんだよね。
車いすをワゴン車の荷台に乗せるのを「馬みたいでいやだ」と、スポーツカーに乗せてしまうあたりなんか、本能的な優しさを感じることができる。
一般的な感覚なら「危険がないように、荷台に乗せるのがあたりまえ」だけど、確かにドリスの言うことにも一理あるんだよね。
だからこそ、フィリップもドリスのまえでは対等でいられる。
同情って、やさしいように見えて、実は傲慢でもあるから。
ドリスのように相手を想えるのは、とても難しいコトだと思う。
少なくとも、私にはとても難しいコト。
「傷つけたらどうしよう。いやな思いさせたらどうしよう」
なんて思って、相手に気遣ってばかりになってしまう。
それじゃあ、相手も心を開いてくれないし、ほんものの友情なんて築けるわけない。
けど、アタマではわかっていても、実践するのはなかなか勇気がいることです。
フィリップはフィリップで、今まで知らなかったことをドリスから教わって、イキイキしていくのが目に見える。
冗談も言うし、下品なことも言うようになってしまうし、たばこも覚えてしまうし。
でも、身体が動かなくてもイキイキしてるのが伝わってくる。
最初は粗野で下品なドリスに懸念を抱いていたフィリップの周りの人たちも、ドリスの陽気で前向きな人柄に惹かれていきます。
飾り気のない人が、他人を惹きつけるのは世界共通なんですね。
この映画は、障害者問題や、格差社会の問題定義として見ることもできるけれど、
コメディタッチな部分が多くて、暗くなくて笑えるシーンもたくさんです。
実際声を出して笑ってる観客がとても多かったのも、印象的だった。
世の中暗いニュースが多いけど、腐らずに、陽気に前向きに生きてけばなんとかなる。
そんな気持ちにさせてくれる、最強にあたたかくて力強い映画でした☆