1987年。23歳の夏。渡米。

 

 

 

 

    初めて訪れたアメリカ。 カリフォルニア州ロスアンゼルス。

 

 

 

 空気がカラッと乾いていて、体が軽く感じます。

 

日差しは白く見えるほど強いのですが、そよ風が涼しく、実に爽やか。 

 

 

嗅いだことがない、樹木のような 甘さとスパイシーさが混ざり合った良い香りが漂い、

日本との太陽光線の違いなのか、全ての色合いが「くっきり」と鮮明に輝いているのです。

 

 

 

この気候が毎日、ほぼ一年中続くというのですから驚きです。 

 

「常夏」という言葉が思い浮かびました。 

 

 

 

そして、すべてが圧倒的に大きい。いや、巨大なのです。

 

物体そのものだけでなく、その物と物のあいだ、空間が広く大きいのです。 

 

 

 

 

      

 

 

 

 

ぼくはここ、南カリフォルニアにある日本食レストランで働くために渡米したのでした。 

職場や環境についてはろくに調べもせず、勢いだけで来てしまったのです。

 

いや「勢い」が揺るがぬよう具体的なことはあまり気にしないようにしていたと思います。

 

 

 

飛行機。

 

海外。

 

そして就職。

 

 

 

すべてが初めての経験でした。

 

アメリカに限らず、海外生活ということがあまりにも日常とかけ離れたことであったので、たとえそのレストランの地を調べたところでさほど意味を成さないと感じていました。

 

 

 

何もかもが未知でしたが、あえて自分でもその未知の状態、真っ新な自分を保って行きたかったのかもしれません。

 

 

しかし・・・。

 

 

 

 

初めて体感した爽やかな異国の空気。

 

それはそれは素晴らしくゆったりしたこの南カリフォルニアの光景が、のちのち牢獄の檻になるとは、この時には全く想像もしていなかったのです。