蒸篭窟ブッシュマン撤退6/29-2023 | べろのクモヤ号!〜俺に点検させてみろ〜

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登山や鉄道などの趣味や舞台などの現場仕事や鉄道カフェのべろの日常です。

撤退と書きましたが実は…


大台ヶ原、蒸篭窟での出来事

通称ブッシュマンの取り付きまでルンゼ状のクラックを降下してた時の事


ゲレンデ取り付きまでここ下るの?

ここアプローチにしては厳しいなぁ

一般登山道から逸れて15分程でゲレンデ取り付きってログに書いてたが

どう考えてもログで予習した所と違う様な…


その時


45度を越える斜面を降下時に

足元の300kgはあろうか岩がずれて

足が滑り滑落

滑りヤバいと思った瞬間、身体が一回転

あ"ーと言う声と共に滑落

一回転して背中を下に身体が宙に浮く

何処かに引っ掛かってくれ!止まってくれ!

と思い

その時、頭で


ごめん!


と一言思い浮かび

回りの親しい人の泣いてる顔が頭に飛び込んできた


予想や予感無く死はいきなり目の前に現れ

一瞬の出来事の中で色んな想いが一瞬に頭に駆け巡る


しかし気が付いたら崖斜面にザックと左足を支点に狭いクラックに踏ん張りこれ以上の滑落を免れていた

しかしその客観的視点から現実感が半分無い

僅かゼロコンマ秒の中で意識が混濁してた


死んだのか?生きてるのか?

マトリックスな感じだ!


パートナーであるmg君の

大丈夫ー?!


と今まで聞いた事の無い叫び声で

大丈夫!!

と返したが冷静に回りを見渡すと崖っぷちで止まってた

mg君の居る場所まで約10m

しかしmgくんの姿は見えない

mg君が近くまで降りてくるが私まであと5mの距離が危なくて近寄れない

私も自力で上がるのはほぼ無理な状況

mg君も何とか近づこうとするが難しく厳しい


mg君!ちゃんとセルフビレイ取ってよー

私が叫ぶ


私も左足で支えているがそんなに何時間も持つとは思えない

私の身体の下からはほぼ垂直なクラックが100mはある

この丁度100m下がゲレンデ取り付きみたいだ

この下、中間に少しのテラスがあるが

ここを踏ん張れずに滑落するとまずテラスに激突して100mを墜落する


先ず即死

想像はしたく無いが人形の様に墜落し肉の塊で横たわるであろう


ザックの中にはロープがあるがザックが支点になり中を出す事は不可能

mg君が10分程の格闘の末に3mほどの距離まで降りて来た

mg君からスリングを投げてくれるがなかなか上手く掴めない

数回のチャレンジで何とか掴み

私のスリングやらクイックドローを幾つも連結させ

上部の岩に支点が取れて

死と紙一重の場所から生還出来た


手が震えていた!


ごめん!今日はもう止めやん?

怖いよ!

と私がひとこと


そしてmg君に聞くと滑落の瞬間を見て

300kgの石が私に直撃したと思ったそうだ

100m落下した石は物凄い轟音を轟かせ落ちていたってそうだ


よく山岳の洋画で滑落して紙一重の場所でぶら下がるシーンがあるが

それを地でいった出来事だった

あれをもう一度やれと言われても100回やって100回とも100m墜落するでしょう

それ程、万分の一のタイミングだったと思うし300kgの石も身体に激突せずにあの狭い谷筋を私の横をすり抜け落ちて行ったのは奇跡としか言いようのない出来事だ

それにハーネスにジャラジャラ付けてたので連結して助かったがジャラジャラをザックに入れてたらとても取り出せない


幾つものタイミングの上の生還だった


擦り傷程度であった

生かされたとつくづくと思う

山の神様がまだまだ死ぬなと微笑んでくれた様だった

それ程、よくこんな崖っぷちギリギリの所で止まれたものだと現場を見たらそう思った

よく止まれたでは無く何故このギリギリの場所で止まったのか不思議と言うか何かの力が働いたと思うと自然に説明がつく

そんな感じの不思議感だった

生きている事への感謝だ


まぁしかしただただ自然の前では人間は無力



mg君と下山し無事を喜び合った




帰りの焼肉屋




といつものお風呂


ノンアルで乾杯する度

湯船に浸かる度


無事笑顔で交わせる喜びをしみじみとパートナーであるmg君は噛み締めていたそうだ

それ程mg君にとっても凄い経験みたいだった


そして今日は普通の生活をする度

歯を磨く度

何気ない回りの人との会話をする度

笑い

泣き

怒り

そして絶望やネガティブな感情さえも


生きていればこそ


と思う


普通の日常がいかに大切で愛しくて幸せかを考える貴重な経験になった


健康に過ごせ生きている今の事実

一連の事故未遂により生と死の境目を一瞬だが垣間見れ何処か客観的に考えると自分の前に起こる色んな事象もちっぽけな事に見えた







だがこの出来事は回りの親しい皆んなには言えない…

大切な人を心配や悲しませる様な事はしたく無いとつくづく思う

だからこの事を書こうか迷った

しかし誰にも言わなければトラウマになりそうなのでここでお話しさせて頂いたし

記録として残しておこうと思った





これを見る登山家の皆さんにも大切な人がいます


1番は安全で笑顔で帰宅出来ます様に皆さんの無事な山行をお祈り致します。






おわり