橋田壽賀子×亀甲縛り=セガサターン | ちらし寿司にうってつけの日

橋田壽賀子×亀甲縛り=セガサターン

先日、【死】というものについて真剣に考えさせられた出来事があった。


『ジャスコに京本政樹ぃがやって来る!!~トークショー&握手会~』

回覧板に入っていた、いかにも胡散臭いチラシの内容を鵜呑みにした小学4年生の僕と親友の羽生善治は、初めて芸能人を生で見れるということですごく興奮していた。


~イベント当日~

偽者の京本政樹だというにも関わらず、店の前には開店前から長蛇の列ができていた。列の中には、同級生で母子家庭の伊良部クンもいた。いつも不機嫌な伊良部クンでさえも、今日ばかりはにこやかな表情をしていた。『伊良部クンのあんな笑顔、ボク初めて見たな~』そう言っている羽生善治は、なぜかマイクタイソンのTシャツを着ていた。

そしていよいよ、京本政樹ぃが登場。ジャスコは大歓声に包まれた。本人を見て偽者だと気付いたのは、おそらく会場内で僕だけであったと思う。もちろん隣にいる羽生善治も本物だと信じており、テンションが上がっている様子だった。
すると何を勘違いしたのか、ハイになった羽生善治は、前にいた長渕似のオジサンに喧嘩を売りだした。

僕はそれを横目で見ながら、関係ない人を装った。

当然、羽生善治は胸ぐらをつかまれたまま表に連れ出されていた。





イベントは、最後まで誰一人偽者だと気付くことなく大歓声の中幕を閉じた。
僕自身も、偽者だとは分かっていたが、視点を変えて見てみることで意外と楽しむことができた。いつの間にか羽生善治のことは忘れて…。


イベントが終了し、伊良部クンと余韻を感じながら会場から外に出ると、柱の影ですすり泣く人がいた。



『羽生クンっ!!!!』

僕らは慌てて駆け寄った。
長渕似の男性に何をされたのかは定かではないが、ボコボコな顔でキチンと体育座りをした羽生善治の姿を見れば、ある程度理解できた。

無言の羽生善治に対して、僕らは何も声をかけてあげることができなかった。







しばらく沈黙が続いた後、羽生善治は突然

『だから日本はキライやねん!!くそぉ。こんな国出ていったるさかい!!』

怒り狂った羽生善治は、東京出身だというのに関西弁になっていて、何だかこっちが恥ずかしくなった。



そして、
その日以来、羽生善治と会うことはなかった。


あれから20年、彼はブルーマンというキャラクターになって母国日本に帰ってきた。