再会長江

 

 Webで、映画「再会長江」が目に留まった。上海から長江の源流、チベット高原までの6300㎞ の旅である。翌日には、キネマ旬報シアターに向かっていた。我々世代には、長江の名前は馴染が薄い。教科書で「揚子江」と習った。

 「再会長江」は、中国南京在住の日本人監督竹内亮が、インフルエンサーとして活躍しながら、大河長江を題材に、中国のリアルな社会や文化を撮りあげたドキュメンタリーである。

 広大な中国大陸を横断するアジア最大の大河長江。竹内監督は10年前にNHKの番組で長江を撮影した。その際に、北極や南極に次ぐ「地球第3の極地」と呼ばれるチベット高原にある「長江源流の最初の一滴」を撮影できなかったことを後悔していた。

 その後、日本から南京に移住した竹内監督は、令和3年(2021)から2年をかけて長江6300㎞を辿る旅に出た。10年前に撮影した友人たちと再会しながら、長江を通して中国の10年の変化を見つめ、今度こそ「最初の一滴」を記録すべく源流を目指した。ナレーションを中国好きなタレント小島瑠璃子が担当する。

 10年間南京に住み、中国語も堪能になった竹内監督は、次のようにコメントしている。

「中国は何だかよく分からないけど、不気味で怖い国」、 飛行機で2時間の隣国なのに、街中で中国人観光客を見かけるのに、実際の中国について、日本人は殆ど何も知らない。

 大手メディアで流れる現代中国は、どれも「批判ありき」で描かれており、中国に住む私からすると、リアルではない。「キングダム」や「三国志」など、日本人は中国物語が大好きなはずなのに。

 「再会長江」は政治的な文脈は一切なく、主に長江沿いに住む友人達との友情を描き、ミクロな視点からリアルな中国を浮かび上がらせようとした。

 この映画を見終わった時、中国に対する見方が変わると思う。それは別に特別な事をしたわけではなく、批判でも称賛でもないフラットな視点で中国を描く人が、日本にはあまりにも少ないからだ。私は別に、「日中友好」を唱えるつもりはない、あくまで「隣にこんな面白い国があるよ」と言いたいだけだ。

 悠久の大河・長江を旅して、この巨大で不思議で面白い国・中国の今を見つめてもらいたいと言う。

 中国の母なる大河長江は、上海、南京、武漢、山峡、重慶、雲南、チベット高原まで、広大な中国大陸を横断する。竹内監督は10年前、チベット高原にある「長江源流の最初の一滴」を撮れなかった後悔がある。あれから10年後、日本から南京に移住し、「長江沿いの民」の一員になった竹内監督は、再び長江6300㎞の旅に挑戦した。10年前に撮影した友人たちと再会しながら、長江流域に住む4億人を通し、中国の10年の変化を見つめ、長江源流を目指した。

 モソ族が暮らす瀘沽湖の集落は、女性がコミュニティのリーダーとなる母系社会の伝統を受け継いでいる。地上の楽園の異名を持つチベット族自治区シャングリラで、民宿を運営する夢を叶えた女性ツームーとの感動的な再会。標高4500mのチベット高原に住む遊牧民。一方、急速な都市化のための山峡ダム開発で、なくなった集落もあり、経済成長の犠牲も垣間見える。

 56の民族を抱えながら、経済大国として世界を牽引する中国の母なる大河長江を辿る。その旅先では、大河と共に生きる心優しき人々との温かな再会があり、テレビでは伝えられない中国激動の10年が明かされる。

 第28回中国ドキュメンタリー長編映画ベストテンに選ばれ、第12回中国ドキュメンタリーアカデミ一賞にノミネ一トされた。「再会長江」は中国全土で旋風を卷き起こし、話題作となっている。

 竹内監督は、個人及び関連の総SNSフォロワ一数1000万人を超し、中国全土でナンバ一1のインフルエンサ一(Weibo旅行関連)としても活躍している。

 中国共産党習近平一派が中国の全てであるかのように伝えられるが、純朴で心温かい中国人が沢山いることも忘れてはならない。

 それにしても、シャングリラで民宿を営むツームーは美しかった。

  

令和6年(2024)6月26日