マイナンバーって何?

 

 「マイナンバー」とは、赤ん坊から年寄りまで、全ての国民に割り振られた12桁の番号である。個人の社会保障や税などの情報を把握し、国民の様々な手続きを便利にすると言われている。しかしこの個人番号は、これまでに50年余り、紆余曲折の物議を醸してきた。

 『行政管理庁史』によると、1960年代からコンピューターによる事務の効率化を唱える「個人コード」の研究会議を設け、検討してきた。しかし、「国民総背番号」と批判され、国民の合意が得られず頓挫した。

 1980年(昭和55)に少額貯蓄非課税制度(マル優)の悪用を防ぐため、「グリーンカード制度」導入に向けた法案が成立する。しかし、「国が個人の資産を把握するためだ」との国民の反対が高まり、金融機関も反対し、これも1985年に実施されないまま廃止となる。

 2002年(平成14)に、住民情報を自治体間で共有する「住民基本台帳ネットワーク(住基ネット)」が稼働する。これは各市町村の住民基本台帳を専用回線で結び、氏名、住所、性別、生年月日の4情報と、住民に割り当てられた11桁の番号「住民票コード」で、全国共通の本人確認が出来るシステムだった。ただシステムに接続するかどうかは各自治体に委ねられていたため、個人情報流失の不安から参加を拒む自治体もあった。

 2007年、公的年金の記録漏れ(消えた年金問題)が発覚する。国民年金と厚生年金の保険料を納めたにも拘らず、社会保険庁(現日本年金機構)の杜撰な管理で、宙に浮いた記録が5千万件にも上った。これにより、2013年にマイナンバー法が制定された。

 マイナンバー法に基づき、2016年(平成28)にマイナンバー制度がスタートする。希望者にはマイナンバーカードが交付された。公的な本人確認に使えるICチップ付きカードである。2017年には、個人用「マイナポータル」が開設された。

 2020年(令和2)にマイナンバーカード取得者に、キャッシュレス決済で使えるポイントを付与するマイナポイント事業が始まる。ゆくゆくは保険証を廃止し、「マイナ保険証」に、運転免許証と一体化、母子健康手帳もと、進められている。しかし相次ぐトラブルの発生で、「本当に大丈夫なのか」との不安も生れている。

 家族の多様化や社会の変化に伴い、マイナンバーは行政と個人が1対1で向かい合う「世帯から個人へ」を起点にした制度だ。個人情報を正しく記録し、流失させない「強いシステム」と自分の情報が正確に記録されているかを確かめ、管理する「強い個人」を前提に成り立つ制度である。

 政府が保険証を廃止し、マイナカードに一体化しようとしているが、国民と政府の信頼関係を構築することが先決であり、性急に推し進めるべきではない。監視国家に向かうとの懸念もあるが、ベクトルの違う情報を無理やり結び付けようとせず、国民の合意を得ながら進める必要がある。

 それにしても、「マイナポイント」の導入には驚いた。政府のやることではない。ポイントというニンジンを国民の鼻先にぶら下げ、加入を促した。国民をバカにするのもほどがある。しかし、これに飛びついた国民も愚かだ。

 3割以下の加入率が、一気に7割を超えた。国が国なら、国民も国民だ。何とも残念な国になってしまったような、嫌悪感を覚える。私は未だに、マイナンバーカードを取得する気にはなれない。

 

令和6年(2024)2月26日