麻布台ヒルズ Family Day

 

 娘から、「会社のファミリーイベントがあるんだけど、来る?ママにも言っといて!」と、電話があった。新しいビルに移ったことだし、見学を兼ねて、行ってみることにした。

 大坂の「あべのハルカス」を抜いて、日本一になった330mの「麻布台ヒルズ」である。総床面積461,770㎡、64階建。正式名称は、「麻布台ヒルズ 森JPタワー」という。

 早速、地下鉄日比谷線神谷町駅に向かった。霞ヶ関駅と神谷町駅の間に、新たに虎ノ門ヒルズ駅が出来ていた。神谷町駅からは、地下通路で繋がっている。娘に教わった通りに進むと、広場に出た。目の前に巨大なビルが立っていた。

 早目に着いたので、芝生広場を散策する。右手に虎ノ門ヒルズが聳えていた。地下街で繋がっているそうだ。東京は来るたびに、風景を変えている。電話をして入口で待っていると、イベント服を着て下りてきた。

 イベント会場で、先ず記念写真を撮る。インドの男子正装「クルタ」の試着を勧められ、試着室に向かう。「インドの北にあるブータンには、民族衣装『ゴ』と『キラ』がある」と言うと、片言の日本語で「そうです。日本の着物です」と、更に「とてもよく似合います」と応えてくれた。

 再度、家族に社長と副社長も加わって、記念写真を撮る。恐れ入った次第である。娘は前日に、サリーの写真を送ってきていた。

 企業概要を巨大スクリーンで紹介され、新たに取り組んでいるAIを体感した。インド美人のインストラクターによる「ヨガ」も体験し、かみさんは「フラワーアレンジメント」にも挑戦していた。

 続いて、ビュッフェスタイルの食事が用意されていた。ノンアルコールのビールと、これまたノンアルコールのスパークリングワインを飲みながら会食していると、これまた社長が我がテーブルにやって来た。

 「最上階のマンションは200億円もするそうだ。トイレも買えない」と言っていたのが、印象に残った。後で娘から、「お父さん、生ハムを食べながら話していたでしょう」と、たしなめられた。

 オフィスは完全なオープンスタイルで、個人の机やロッカーもない。書類に埋もれて仕事をしていた当時を振り返ると、全くの別世界である。

 30階の展望ルームから、東京の夜景を眺めていた。照明に照らされた東京タワーが、積木細工のように輝いていた。

 「麻布台ヒルズ」の周辺はホテルや大使館が多く集まり、文化都心・六本木ヒルズとグローバルビジネスセンター・虎ノ門ヒルズの中間に位置している。それぞれの個性を持ったヒルズが繋がり、住宅・オフィス・文化施設・商業施設が集積されている。「暮らす」「働く」「集う」「憩う」「学ぶ」「楽しむ」「遊ぶ」など、人々の様々な営みがシームレスに繋がり、人と自然が調和した都市空間を形づくっている。

 麻布台ヒルズの計画地は東西に細長く、高台と谷地が入り組んだ高低差の大きい地形だった。敷地は細分化され、小規模な木造住宅やビルが密集し、建物の老朽化も進み、都市インフラからの整備が必要だったという。

 そこで、平成元年(1989)に「街づくり協議会」を設立し、30年という長い年月をかけて、300人もの権利者と粘り強く議論を重ね、計画を進めた。平成29年(2017)に都市計画が決定され、令和元年(2019)に着工。令和5年(昨年)11月24日に開業した。

 麻布台ヒルズでは、7階~52階を中心に、就業者数2万人を想定するオフィスがある。33階と34階にある「ヒルズハウス」は、入居企業とその従業員が、企業の垣根を超えて使うための拠点となている。

 14階~53階に320戸の麻布台ヒルズレジデンスA、6階~64階に970戸のB、6階~8階に31戸の麻布台ヒルズガーデンプラザレジデンスと、コンセプトの違う住宅を設けている。

 54階~64階の最上部には、わずか91邸に限定さられた「アマンレジデンス東京」がある。最上階は推定価格200億円、他の部屋も数十億円とか。購入者が殺到しているという。信じられない現象だ。

 1階~13階の低層部には、アマンの姉妹ブランド「Janu(ジャヌ)」の世界初となるホテル「ジャヌ東京」がオープンする。その他食事、飲み屋など、150店ほどが集まる。皆高そうで入るのに二の足を踏むが、女性客が多い。

 「街全体がミュージアム」をコンセプトに、ミュージアムとギャラリーも設置し、芸術・文化が一体となったビル全体が一つの街となっている。

 娘の着替えるのを待って、神谷町駅までの地下通路を案内される。おしゃれな店が多いが、ヒルズよりややリーズナブルとのことだった。昨夜は準備のため殆ど寝ていないとのことで、電車に乗るなり爆睡していた。

 娘も大人になった。多摩川の堤で泣いていた子供の頃を思い出し、娘の顔をじっと見ていた。

  

令和6年(2024)2月17日