最初は1種類の睡眠導入剤から始まる。医者が患者の「眠れない」という症状に対する鑑別診断をせず、すぐに不眠症と決めつけ、また、原因を探ることもせず、睡眠教育も行わず、サクサク薬を処方したせいで、薬の量が次第に増え、種類が増え、とうとう睡眠薬だけでは眠れなくなり、抗不安薬が追加され、、終いには抗精神病薬まで処方され、それでも「眠れない」が延々続く。これが「眠れない」と訴え、気づいた時には多剤処方の地獄に陥る典型的パターンである。

いかなる場合も、ただ漫然と薬を飲んでいるだけでは良くならない。眠れない原因を探り、その改善をしない限り、薬のごり押しで良くなることはほとんどない。しかも、「良くならない」という状況が、患者の自己判断で薬を増やしたり減らしたりと、内服ルールから逸脱させていくからだ。

全ての薬剤に使用のルールがある。精神科の薬の場合、ルールを守らないことで副作用が目立つばかりか、依存を形成する。すると、「眠れない」だけだった症状に抑うつや不安も加わり、事態は複雑化し、薬の種類がどんどん増えてしまうのだ。