睡眠薬を処方するということは睡眠障害の治療をするということだが、患者の中には「眠れない」を病気じゃないと思っている者がたくさんいる。例えば、睡眠薬を処方する前に睡眠教育をするのは、精神科治療の常識だが、中でも「朝定刻に起床し、その時間を絶対後ろ倒しにしない」とか、「昼夜逆転生活をやめる」といった指導は、まともな精神科医なら絶対欠かさない。まともじゃない医者は一言も言わないが。そのまともな医者が、

朝定刻に起床しその時間を後ろ倒しにしないようにしてください。

と説明するや、

は?何でそんなこといちいち命令されなきゃならないの?

と居直る患者は珍しくない。

いや、これ(睡眠教育)は必要な治療ですから。

治療?私、病気じゃないんですけど。「ただ眠れないから」来ているだけで、薬だけくれればそれでいいんですけど。

病気じゃないのに薬を出すことなど絶対にありませんよ。薬は病気の症状を改善したり緩和するために処方されるのですから、その薬の効きを良くするためにも、こういう教育は必要なんです。ご理解いただけますか?

なんか、ムカつく。バカ扱いですか。ってか、時間ないんで薬くれるかどうかはっきりしてもらえます?

と、ざっとまあこんな感じだ。これが精神科医療のリアルだ。