初診で「あなたはADHDです」と告知するだけじゃなく薬まで処方する医者がいたら、これは治療のガイドラインを無視しているとので「受診をやめるべき医者」と判断して良い。そういう医者はADHDの治療のABCがわかってない。医療で大事なのは、最初は必ずガイドライン通りの標準的医療を試すことである。最初から独断的で特殊な治療などするべきではない。

何度も繰り返すが、精神科診断手順の最初のステップは身体疾患の除外であり、精神科医はこのことを、患者を診続ける限り、ずっと頭の中に置き続ける必要がある。身体疾患の可能性がゼロと断言できる患者などどこにもいないと言っていいからだ。著明な不安や焦燥を認める患者に、なかなか改善しないからといって薬だけとっかえひっかえして半年見ていたら、ある日その患者が救急部に運ばれ、カリニ肺炎が発見されHIV感染症とわかったという症例報告がある。明らかに精神科医の見落としである。HIV感染者が多彩な精神症状をきたすことは常識である。しかも今やAIDSはタイミングさえ逃さなければ治る病気だけに、もし精神科医の誤診で治療タイミングを逸しその患者が死んだら、裁判を起こされたら必ず負ける。

精神科診断の次のステップは、ADHDがどうとか語る前に、精神科的に重要な疾患つまり、統合失調症と双極性障害を確実に除外することである。統合失調症も双極性障害も、最初はあたかも適応障害、ADHD、うつ病、のような症状で発症することが多いため、経験の浅い医者はうっかり「適応障害」「ADHD」などと診断しがち。しかし今言ったように、最初から適応障害やADHDと診断することは精神科の診断手順に反しているので、やはり初診で適応障害だのADHDだのと告知することはありえない。

統合失調症と双極性障害は是が非でも除外する必要があるので診断には少々時間がかかります。ご協力ください。

とひとこと患者に断り、問診を重ねる医者が信頼に足る医者だ。