「夜仕事をしているから朝寝て夕方起きるために睡眠薬が欲しい」という人が精神科に来るが、優秀な精神科医は、そのような使用法で睡眠障害を改善する睡眠薬はありませんと説明する医者である。小学生でも知っているはずの知識だが、人は夜寝て朝目覚めるように脳と身体が設計されている。朝寝て夕方目覚めるようには設計されていない。つまり人間本来の生理機能を無視し、めちゃくちゃな生活をするために使用する薬などどこにもないということである。薬は治療のために使うものなのだ。

残念なのは、そういう彼らに薬を処方する精神科医が実に多いこと。するとどうなるか。当然のことながら眠れないので、薬はどんどんどんどん増えていく。それでも眠れないので、睡眠薬以外の抗精神病薬が足される。しかし眠れず負のループとなる。こうして依存が作られる。