精神科にいけば、金で病気を買える、と思っている「顧客」は増加の一途で、何故、病気が欲しいのですか?と聞くと、仕事ができない免罪符にしたい。会社を休む大義名分が欲しい。とはっきり言う。はっきり言わなくても心の中で思っている。どっちにしろ、他者目線の自分の評価を下げないための免罪符を欲しがっているのに変わりはない。

病気になりたい。病気と診断して欲しい。循環器や癌の専門医の前で、病気になりたい、などと言う人は絶対にいない。ある心臓外科医は、うちの診療科には自分から病気になりたいなどと言う人や自分から死にたいなどと言う人はひとりもいない。ときっぱり言った。

医者の使命は病気を減らすことで増やすことではない。

慶応の村松先生が本で警告していることだ。安易に病気と診断し、右肩上がりの増加をみる薬を使い、全然良くならない患者をふやすばかりか、あろうことか、病院に火を放ったり、医者を刺し殺したり、暴言暴力に及ぶ犯罪者をも増やしているのである。その証拠に、今どこの精神科の受付にも、

暴言暴力、しつこいクレーム、全部ただちに警察通報します。

と張り紙が見られるようになった。こんな張り紙を他の診療科で見ることがあるだろうか。眼科や耳鼻科の受付カウンターに、こんな張り紙をしてある病院があるなら教えて欲しい。病気は避け、予防するものであり、間違っても自らなりたいと思うものではない。そういうことを、親や教師が教えてくれないというなら、精神科医が教えなければならないのだが、暴言暴力を受けるとなると、そういう厄介なことに首を突っ込みたくないという医者が増えても文句は言えないだろう。