現状保持率は、まだ高いようだった。

倒れた翌日だが、会社に行く精神力と思考回路は正常に起動していた。それは起床時にはわかるのが常だった。思えば昔からそうだった。今日一日がうまく稼働するかどうかは、起床時の「それ」で決まるのだ。「それ」とは。これは貴子自身も言葉では表現できないものだった。しかしながら、身体の中では確かにわかる「それ」なので、「それ」が大丈夫なら、その日は概ね大丈夫であり上手くいくのだった。


 「昨日は申し訳ございませんでした」出勤してすぐに、貴子は先ず部長の森田のデスクに向かい謝罪をした。森田部長は身体を気遣う言葉を貴子にかけ、無理するなよと言葉添えもしてくれた。周囲の目が思ったより刺々しいものではなかったことに貴子は驚いた。上司の早田はいなかった。ホワイトボードのスケジュール表に「am9:00銀座コウエイ社」と書かれていた。貴子はそれを見て、銀座か…と、物思いに耽るような気持ちになった。貴子は周りのスタッフにも謝り終えると、自分のデスクに着席した。白崎菜緒が早速声をかけてきた。

「先輩勘弁してくださいよー。わたしと別れたあとに倒れるなんて、しかも会議までぶっちぎって。けっこう上客のクライアントだったみたいだし。あと、わたしが最後に一緒だったから、部長や早田さんに、あれこれ聞かれて、ちょーめんどくさいんだから。もうー」菜緒は、ハキハキとズバズバと言いたいことだけを言うと、受話器をとり営業の電話をかけ始めた。つまり、仕事にとりかかったわけである。

貴子は思った。こういうのいいよな。同情心ゼロ。それよりも自分第一。切り替え早く、次に進む。

「ごめんね」貴子は滑舌良く営業電話をしている菜緒の隣でそう言った。


 「ねぇ。年齢のこと。気にしてる?」給湯室で青木しゅう子は貴子にそう言ってきた。何を突然?と首を傾げるよりも、貴子は直ぐに理解し、安堵した。

「はい、かなり」貴子はコップを洗いながら答えた。

「どの辺までいってるの?」青木は続ける。

「最近、週二くらい」貴子が言う。

「そうか…私もちょっと前までそうだった。いまは、だいぶ楽になったよ。だけど完全には治らないよ。だってそもそも病気じゃないからね」青木は笑って言った。とても美しい笑顔だった。貴子はそんな青木の笑顔に胸が救われた。同時に、この人は『理解者』だと悟った。

…続く…


こんにちは!

活字中毒(katsuji-junkie)わたぼうです!

なかなか良い雰囲気の会社じゃないか!

これがワタクシの第一声の感想ですニヤリ

理解者が居るということを実感できること。

これはかなりポイント高いよ。

これで人生左右される場合少なくないからね。

とりあえず、貴子の周囲は温かかった。

あとは貴子自身が、どうするか。だな。


冷凍庫の挽き肉が。
気になって。気になって。
夜中に、作ってしまったハンバーグ。
うまい!

では。
また来る日まで。
ばいばいー✋飛び出すハート