【読書日記】日本語とは、特異な言語である。-「二重言語国家・日本」 | ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~

【読書日記】日本語とは、特異な言語である。-「二重言語国家・日本」

おはようございます。
本日の1冊はコチラ↓


「二重言語国家・日本」 石川九楊 中公文庫


日本語は、難しい。
外国の方はそうおっしゃいます。

われわれからすると、
英語をはじめとする外国語に、
とっても苦労しているのですが・・・

お互いに苦労する理由。
それは「日本語が特異な言語である」
ためかもしれません。

本書では、日本語の特徴を分析し、
その成り立ちから現代までの歴史より、
日本および日本人論を展開しています。

日本は変わった国です。

ルース・ベネディクトの『菊と刀』の中で、
「日本人ほど不可解な国民はなかった」
と言っています。

サミュエル・ハンチントンの『文明の衝突』
では、「日本文明」として紹介されています。

外国、特に西洋諸国から見たら、
日本はとても特異な国なのです。
その中心が、日本語であることは、
疑う余地はありません。

『日本語の特異性は、ひとつには、書字中心言語であること、第二には、漢字=漢語と平仮名=和語と、つけ加えれば、片仮名=西欧語さえも併せもつ、二重、多重性言語という構造の中にある。』(P39)

西欧を中心として、
世界の多くの言語は表音文字です。
文字は音を表し、その組み合わせによって
意味を持ちます。

日本語は、表意文字です。
文字そのものが意味を持っていて、
話す・読むの間でも意味合いが変わる
特徴を持っています。

書字中心言語は、東アジア文化圏、
特に中国や韓国でも同じです。
その軸になっているのは、漢字です。

朝鮮語はハングルを持っていて、
日本語は平仮名・片仮名を持っています。

こうした文字の形成の中に、
それぞれの文化が成り立っている。
本書のこの展開は興味深いです。

『おそらく、こうした文字の形態が根本的に、「日本人」の心理・思考の形態を規定していると思います。世の中には、いろんな「日本人論」があります。日本的心理とか、あるいは日本的な思考といった事柄があれこれいわれていますが、そういうものは重要ではないと、私は思っています。むしろ、それは、漢字仮名交じりという表記法に由来する問題だと思うのです。』(P108)

これは本文中に紹介されている、
柄谷行人氏の言葉ですが、
文字が思考を決めるという考え方は、
新鮮な言葉に聞こえます。

もともとは、中国から入ってきた漢語を
一般的に用いていました。
それが平安時代になると、平仮名が完成し、
女性の言葉として使われるようになります。

「男もすなる日記といふものを、
女もしてみむとてするなり」の書き出しで
紀貫之が『土佐日記』を著しました。
これは、10世紀の話です。

そして片仮名は、漢文の和読に使われ、
徐々に浸透していったと言われています。

二重言語が成立して以後の日本は、
鎌倉~江戸時代まで武士の時代となります。

江戸末期になると、西欧の文化が入り、
それを和製の単語にしたり、
片仮名で表記したりしました。

片仮名を用いる比率は徐々に高まり、
現代では一般的になっています。
これはある意味、日本語の特異性を
滅失させる現象ともいえます。

もしかすると、日本が失いつつあるのは、
言葉なのかもしれません。
本書では、日本語の再編や教育について、
強いメッセージを発しています。

今でも「今年の漢字」を一文字で表し、
日本全体で共有しています。
昨年は「絆」が選ばれ、誰もが納得し、
日本の連帯を確認しました。

やはり、漢字には強い力が秘められ、
私たちはそれを感じています。

『日本民族や日本人というのは、漢字と仮名文字によって統合される言語にもとづく概念である。(中略)また日本語は、島嶼民の話し言葉そのものでもなく、文字(漢字と仮名文字からもたらされる文)によって再編、創造された言語の別名である。』(P222)

ちょっと過激な部分はありますが、改めて
「日本語とは何か?」
「日本人とは何か?」
を考えさせられる本です。

英語の勉強も重要ですが、
コミュニケーションの根幹となる
日本語もぜひ興味を持ってみては
いかがでしょうか。






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二重言語国家・日本 (中公文庫)