【読書日記】恋は画家で、相手は画布だ。-「友情」 | ほぼ日blog~通勤読書で継続力を高めよう!~

【読書日記】恋は画家で、相手は画布だ。-「友情」

おはようございます。
本日の1冊はコチラ↓


「友情」 武者小路実篤 新潮文庫


今さらながら、手を出してみました。
とても深いというか、長く読まれる理由がわかる1冊です。
人間の心理描写が素晴らしい。

友情を取るか、恋愛を取るか。
そんな場面に出くわしたことはありますか?
難しいですよね・・・

こういう場合、どちらを取っても片方は必ず失います。
もしかしたら、両方失うかもしれない。

本書では、1人の女性を巡った親友の2人が描かれています。
杉子に恋する野島。それを応援する大宮。
表から見ると、そういう図式です。

でも、杉子は大宮に恋していて、大宮もそれに気付いている。
自分の気持ちを抑えるため、友人を応援するため。
大宮は杉子に冷たくし、野島の評判を持ち上げます。

ついには、1人でパリに旅立ってしまうのですが・・・
杉子は野島のプロポーズを断り、大宮を追いかけてしまいます。
その一部始終を、後に野島は大宮からの手紙で知ることになります。

杉子の兄・仲田は、野島のことを見越してか、彼にこう言います。

「恋は画家で、相手は画布だ。恋するものの天才の如何が、画布の上に現れるのだ。・・・恋が盲目と云うのは、相手を自分の都合のいいように見すぎることを意味するのだ。」(P27)

人を好きになると、良い面ばかりが目に入ってきますよね。
まさしく、絵に描かれた理想の異性になってしまう・・・
なんて経験がある人も、あるいはそうなった人を見たことがある
かもしれません。

相手が自分を高く見ていることに気付くと、プレッシャーを
感じてしまいますよね。
それは恋愛でなくても同じです。

「本当の自分」に気付いたとき、相手はどう思うだろう・・・
という恐怖と戦わなければいけません。

杉子は、野島に対して一切の気持ちがありませんでした。
大宮にばかり気がいっていて、気付かなかったのです。
野島に対する気持ちについて、こう言っています。

「野島さまは私と云うものをそっちのけにして勝手に私を人間ばなれしたものに築きあげて、そして勝手にそれを讃美していらっしゃるのです。ですから万一一緒になったら、私がただの女なのにお驚きになるでしょう。」(P111)

言い方は冷たいですが、まさしくその通りだと思います。
あまりに相手のことを思いすぎると、周囲だけでなく相手さえも見えなく
なってしまうのかもしれません。

その結果、大宮と野島は訣別しました。
大宮は杉子を得ましたが、野島は両方失ってしまったのです。

友情と恋愛。
当時も今も、人間関係の中心を占めています。
だからこそ、ちょっとしたことで深まり、傷ついてしまいます。

苦しいけれど共感を生む不変のテーマ。
それをありありと描いているからこそ、長く読まれているのだと思います。
また読み返したい1冊でした。



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友情 (新潮文庫)/武者小路 実篤
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